宅建まちがい探し:今回は「意思表示」のまちがい探しを見ていきます。心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤による意思表示、詐欺や強迫によって行われた契約はどうなるのか。肢の一つではもちろん、丸々1問でも出題される重要なところです。
- 宅建まちがい探し!意思表示
以下、前提として「A所有の甲土地につきAとBとの間で売買契約を締結する場合」に関する問題となります。
【問1】Aの売渡し申込みの意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていたときでも、AとBとの意思は合致しているので売買契約は有効となる。
【問2】ー
【問3】Aは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じて事情を知らないCとの間で甲土地の売買契約を締結した場合、AB間の売買契約が存在しない以上、Cは甲土地の所有権を主張することができない。
【問4】AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
【問5】Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。
【問6】ー
【問7】ー
【問8】ー
【問9】ー
【問10】甲土地がAからB、BからCへと売り渡され、AB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BC間の売買契約締結の時期にかかわらず、Aは登記がなくてもCに対して所有権を主張することができる。
以下、解答です。
全て誤り(=×)の問題となっています。
権利関係の中では簡単なところですね。
出題された場合は確実に1点をゲットしておきましょう。
より詳しい解説は「分かりやすい民法解説」をご参照ください。
1:真意ではない意思表示=心裡留保は有効となります。原則として冗談では済まされません。しかし、相手方がその「真意でないこと」を「知っていたか知り得た場合」は無効となります。よってAB間の売買契約は無効となり、間違いキーワードは「BもAの意思が真意ではないことを知っていた」となります。また解答テクニックの一つですが、本肢のように『~ので』といった理由付けをしている文章はほぼ誤りですね。もちろん正しい肢であることもありますが、答えが分からなかったときの参考としてこれは覚えておきましょう。
2:ー
3:通謀虚偽表示に第三者が登場したパターンですね。本試験で出題されるのは圧倒的にこのパターンです。上記2番の通り通謀虚偽表示によるAB間の売買契約は無効ですが、何も知らない善意の第三者Cは保護され、Cは所有権を主張することができます。もちろんCが悪意ならば保護されません。基本の基本ですが、法律の世界では「知らなかった=善意」「知っていた=悪意」と言います。キーワードは「事情を知らないC」となります。
4:勘違い=錯誤による意思表示は取消しの対象となります。心裡留保は原則有効、通謀虚偽表示は無効ですが、錯誤は取消しとなります。前回もお話しましたが、この無効と取消しはしっかり区別しておいてください。動機に錯誤があった場合、その動機が相手方に表示されていれば取消可能となり、相手方に表示されていなければ取消不可となります。相手方からすれば表示されていない動機など知る由もありません。そして錯誤による取消しが可能な場合でも、取り消すことができるのは勘違いをした表意者Bです。相手方から取り消すことはできません。これもしっかり覚えておいてください。キーワードは「AはBの錯誤を理由に」となります。
5:上記4番の通り錯誤による意思表示は取り消すことができますが、軽い勘違いでいちいち取り消されては相手方も大変です。そこで錯誤取消の要件として「重要な錯誤」が求められます。法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして大きな勘違いがあったときに取り消すことができるのです。これに該当しない場合は取り消すことができません。そして表意者に重大な過失があるときも取消不可となります。普通に注意していれば気がつくはずなのに、あまりにもうっかりミスによる勘違いがあった場合は相手方が保護されます。法律とはこんなもので、「どちらを守るべきか」を考えることで覚えやすくなります。キーワードは「Aに重大な過失があったとしても」となります。
6:ー
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10:詐欺の場合は取消前の善意無過失の第三者には対抗できませんでしたが、強迫の場合は問答無用で取り消していかなる第三者にも対抗することができます。詐欺の場合は騙された側にも少しは落ち度があるかもしれませんが、強迫の場合はやむを得なかったということですね。しつこいですが誰を一番に守るべきかを考えてください。よってAは、Cが善意でも無過失でも登記がなくても、何ならCに登記があっても強迫による取消しをCに対抗することができます。しかし!さすがに「取消後」の第三者は話が別です。強迫により取り消されたということで終わった話ですので、その後に出てきた第三者とは詐欺と同じく対抗問題となります。登記の先後により勝敗が決まりますので、キーワードは「BC間の売買契約締結の時期にかかわらず」となります。尚、第三者による強迫でも表意者は強く保護され、誰かに脅されたAがBと売買契約を締結した場合、Bが強迫について善意無過失でもAは当該意思表示を取り消すことができます。ここも詐欺と異なりますので注意しておいてください。
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