宅建試験の権利関係解説:マンション管理士試験の登場で、宅建試験での「区分所有法」の出題数が平成13年より1問となりました(それまでは2問)。出題数は1問、しかも覚えることが多くて大変です。マンション管理士試験ができた今、宅建試験でそれほど難しい問題は出題されませんので、あまり難しい問題に固執せずに何度も出題されている重要問題だけを解けるようにしておいてください。近年はシンプルな基礎問題が多く、むしろ得点源となっています。過去問の中にはすごく難しい問題も含まれていますので、昔の過去問を片っ端から掘り返す勉強をする必要はないと思います。
- 区分所有法の宅建解説
区分所有法は、通称「マンション法」とも呼ばれています。この、区分所有法が適用される「マンション」とは「分譲マンション」のことで、賃貸マンションは借地借家法が適用されますのでご注意ください。
以下、区分所有法の基本事項と要点です。深入り禁物ですが、これだけは最低限覚えておいてください。
■区分所有建物(マンション)とは
マンションには、専有部分と共用部分があります。居住用や事務所として利用される部屋を専有部分といい、共用部分は、法定共用部分と規約共用部分とに分けられます。
各共有者(区分所有者)の持分は、その有する専有部分の床面積の割合によって決まり、その床面積は壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によるものとされています。
法定共用部分とは、廊下や階段、エレベーターなど、みんなで共用されるものをいい、規約共用部分とは、集会所や管理人室など、一見すると専有部分に見えますが、規約によってみんなで共用すると決めたものをいいます。規約共用部分は登記が必要だということは覚えておいてください。
法定共用部分 玄関ホール、廊下、階段など 登記不可 規約共用部分 管理事務室、集会室など 登記可能(表題部)
規約とは、その区分所有建物に関して区分所有者たちが定める独自のルールです。規約で定めたことや集会で決議されたことは、区分所有者の特定承継人に対しても効力を生じます。
規約の保管 :管理者(管理者がいないときは、規約または集会で定める者)
規約の保管場所:建物内の見やすい場所に掲示
規約の閲覧 :利害関係人の請求があった場合、正当理由あるときを除き閲覧を拒めない
また、最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により以下の規約を設定することができます → 規約供用部分、規約敷地、敷地利用権の分離処分、敷地利用権の持分割合
規約の保管 管理者が保管(管理者がいない場合、規約または集会の決議により区分所有者またはその代理人が保管) 保管場所 建物の見やすい場所に提示する 閲覧請求 利害関係人が閲覧請求をした場合、正当理由がある場合を除いて拒むことができない 規約の設定 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書で次の事項について規約を設定することができる
1.規約供用部分
2.規約敷地
3.専有部分と敷地利用権の分離処分を可能とする定め
4.敷地利用権の持分割合
規約敷地=マンション本来の法定敷地に対し、規約によって敷地とされた土地(マンションから離れた場所にある駐車場など)
そして、マンションにはいろいろな共用部分がありますので、区分所有建物について物事を決める(管理)には、みんなで集会を開いて決める必要があります。集会とは、マンションの最高意思決定の場です。
この管理は、管理組合によってなされます。管理組合は、集会の決議で、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成を得て、主たる事務所において登記をすれば法人となることができるということも覚えておいてください。
集会の管理者 ⇒
法人化されている場合 :管理組合の理事
法人化されていない場合:区分所有者が直接管理(例外として管理者を設置することも可 ← 規約に別段の定めがない限り、集会の普通決議によって管理者を選任・解任すること可)集会の招集期間 年1回、管理者は会日の1週間前(建替え決議は2ヶ月)に会議の目的を示して各区分所有者に発する
(区分所有者全員の同意があるときは通知不要。規約で招集期間の伸縮も可)集会の招集通知 ・区分所有者が通知場所を管理者に通知していれば、その場所
・区分所有者が通知場所を管理者に通知していなければ、専有部分が所在する場所
・規約により、条件に合う者に対しては建物内の見やすい場所に提示して通知することも可集会の決議事項 あらかじめ通知した事項のみ
(規約により、決議定数が定められている事項を除き、通知事項以外について決議することも可)
区分所有者全員の承諾があった場合は書面や電磁的方法による決議が可能で、区分所有者全員の書面また電磁的方法による合意があった場合は「決議不要で」書面や電磁的方法による決議があったものとみなされます。
管理者は、毎年1回の集会において事務に関する報告をしなければならず、集会において議事録が書面で作成された場合、議長及び集会に出席した区分所有者の2人が署名しなければなりません(2022年法改正により押印不要となりました。議事録が電磁的記録で作成されている場合も「署名に代わる措置」で足ります)。
管理者は、規約または集会の決議によりその職務に関し区分所有者のために原告または被告となることができ、規約により原告または被告となったときは、その旨を遅滞なく各区分所有者に通知します。
規約で当事者 → 通知必要
集会で当事者 → 通知不要管理者の選任・解任 集会の普通決議(規約で別段の定め可) 管理者の解任請求 各区分所有者が単独で裁判所に請求可 管理者の資格と任期 制限なし 管理者による保存行為 単独で可 管理者による管理変更行為 規約または集会の決議に基づく 管理者の代理権 職務に関して区分所有者を代理できる 管理者による事務報告 毎年1回集会において事務報告を行う 管理者による管理所有 規約に別段の定めがあれば共用部分を所有できる
では、超重要な決議要件を見ていきます。
■区分所有者および議決権の 各5分の4 以上の賛成が必要
・建替え決議:規約で別段の定め(定員の増減)不可
建替えに賛成の区分所有者は、反対の区分所有者に対して、区分所有権の売渡請求をすることができます(反対者からの買取請求は不可)。
■区分所有者および議決権の 各4分の3 以上の賛成が必要
・共用部分の重大変更:規約により区分所有者の定数を過半数まで減らすこと可能
議決権の定数を減らすことはできないという点に注意してください。特別な影響を受ける者の承諾も必要です。
・規約の設定・変更・廃止:別段の定め不可
一部の区分所有者に影響を及ぼすときは、その者の承諾が必要です。
・管理組合の法人化:別段の定め不可
・専有部分の使用禁止請求:別段の定め不可
必ず裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
・専有部分等の競売請求:別段の定め不可
必ず裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
・占有者に対する引渡請求:別段の定め不可
必ず裁判所に訴えるという方法で請求しなければなりません。
・大規模滅失の復旧決議:別段の定め不可
大規模滅失とは、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合をいいます(決議に賛成していない区分所有者からの買取請求が可能 ← 建替え決議と比較)。2022年法改正により、建替えに参加するか否かを回答すべき旨の催告、買取請求をするか否かを確答すべき旨の催告、買取指定者の指定がされた旨の通知が電磁的記録でも可能となっていますので頭の片隅に・・。
■区分所有者および議決権の 各過半数 の賛成が必要
・共用部分の管理行為と軽微変更(特別な影響を受ける者の承諾必要):別段の定め可能
・行為の停止請求:別段の定め可能
騒音や悪臭などの迷惑行為の停止請求は、区分所有者の1人または数人、もしくは全員、管理組合法人などが自由にすることができますが、訴訟を提起するには過半数の賛成が必要です。
・小規模滅失の復旧決議:別段の定め可能
小規模滅失とは、建物の価格の2分の1以下の部分が滅失した場合をいいます。
■区分所有者および議決権の 各5分の1 以上の賛成が必要
・集会の召集:規約により、区分所有者の定数も議決権の定数も減じること可能
専有部分を借りている者(占有者)は議決権を持たないので決議に参加することはできませんが、集会に出席して意見を述べることはできます。そして、決議の効力は占有者に対しても及びます。これは覚えておいてください。
■単独で可能
・共用部分の保存行為:別段の定め可能
・小規模滅失の復旧:別段の定め可能
1人で直して、その費用を他の区分所有者に請求することができます。決議により復旧させる場合は過半数の賛成が必要だということと区別しておいてください。
・行為の停止請求(裁判外):別段の定め不可
■共用部分の管理方法まとめ管理方法 要件 承諾 規約による変更 保存 単独で可 不要 可 管理 各過半数 必要 可 軽微変更 各過半数 必要 可 重大変更 各3/4以上 必要 区分所有者の定数のみ過半数可
以上、近年易化傾向の区分所有法はこれだけでも覚えておいてください。
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