宅建試験の権利関係解説:民法には、賃貸借契約の規定があります。「借地借家法」とは、建物と土地について定めた特別な賃貸借契約の規定です。賃貸人に比べ立場も弱く、経済的にも不利である借家人や借地人を保護するために、民法の規定を修正、そして補った法律が借地借家法です。より詳しい解説はこちら→借地借家法の難問対策
- 借地借家法の宅建解説
借地借家法で保護される「借家」とは、建物賃貸借に適用されます。一時使用や、無料で建物を借りる場合には、借地借家法は適用されません。借地借家法で保護される「借地」とは、土地を借りて建物を建て、そこで生活する場合に適用されます。建物所有を目的とするならば、賃借権でも地上権でも適用されます。
借地権を持つ(土地を借りた)者を「借地権者」といい、借地権を設定した(土地を貸した)者を「借地権設定者」といいます。建物の場合は、通常通り「賃貸人」「賃借人」です。では、借家権と借地権の要点を見ていきましょう!
■借地借家法の「借家権」
1.建物賃貸借の存続期間については、存続期間を定める場合と、期間の定めのない場合があります。
[ポイント] 存続期間を定める場合、最短期間・最長期間について制限はない!ただし、期間を1年未満とした場合は、期間の定めがないものとなります。
2.期間の定めがある建物賃貸借をする場合、公正証書等の書面によって契約をすれば、その存続期間を1年未満とすることもできます。
[ポイント] 契約の更新をしない旨の特約を定めることもできる!賃貸人は賃借人に対して書面を交付し、賃貸借契約は更新されず、期間の満了により終了する旨をあらかじめ説明しなければなりません。2018年法改正により、テレビ電話等による重要事項の説明時に、この定期建物賃貸借の説明もできるようになった点、2022年法改正により建物賃借人の承諾を得て電子交付も可能となった点に注意してください。
3.建物賃貸借に存続期間の定めがある場合、賃貸人または賃借人のどちらかが、期間満了の1年前から6ヶ月前までに、相手方に対して更新拒絶の通知をしなければ、その借家契約は、前の借家契約と同じ条件で更新したものとみなされます。
[ポイント] 賃貸人から更新拒絶の通知をする場合は、正当事由が必要である!正当事由ある更新拒絶の通知がなされたにも関わらず、賃借人が期間満了後もそのまま建物の使用を継続している場合、賃貸人は遅滞なく異議を述べなければ、借家権は更新されてしまいます。
4.建物賃貸借に存続期間の定めがない場合、賃貸人または賃借人は、いつでも解約の申入れができ、賃貸人からの解約申入れの場合は6ヶ月後、賃借人からの解約申入れの場合は3ヶ月後に、それぞれ賃貸借契約は終了します。
[ポイント] 賃貸人から解約を申し入れる場合は、正当事由が必要である!正当事由ある解約申入れがなされ6ヶ月が経過したにも関わらず、賃借人がそのまま建物の使用を継続している場合、賃貸人は遅滞なく異議を述べなければ、借家権は更新されてしまいます。
5.賃借人は、賃貸人の同意を得て付加した造作物(畳やふすまなど建物から分離できるもの)を、賃貸借契約終了時に、賃貸人に対して時価で買い取るよう請求することができます(造作買取請求権)。
[ポイント] 造作買取請求権を認めない旨の特約は、有効である!
6.民法の賃貸借契約と同様、賃貸人の承諾を得れば、借家を転貸したり、借家権を譲渡することができます。賃貸人に無断で転貸・譲渡した場合は、原則として、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます。
[ポイント] 賃貸人と賃借人の賃貸借契約が終了した場合、転貸借契約も終了する!以下、例外です。
賃貸借契約が「期間満了」または「解約申入れ」により終了した場合は、賃貸人が転借人に対してそのことを通知しないと、賃貸人は、賃貸借契約の終了を転借人に対抗することができません。賃貸借契約が「賃借人の債務不履行」を理由に解除された場合は、賃貸借契約の終了とともに転貸借契約も当然に終了し、賃貸人はその効果を転借人に対抗することができます。また、賃貸借契約が「合意解除」により終了した場合は、賃貸人はその効果を転借人に対抗することができません。
7.租税価格の増減や地価高騰などにより、現在の借賃が不相当となった場合、当事者(賃貸人または賃借人)は、借賃の増額・減額を請求することができます。
[ポイント] 増額をしない特約がある場合、その特約期間内の増額請求は認められない!(減額しない旨の特約は無効)
普通借家権存続期間 上限なしで定めによる(1年未満の定めは期間の定めがないものとみなす) 更新 法定更新されるケース
・期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新拒絶の通知がない場合
・賃貸人からの拒絶はあるが、正当事由がない場合継続 使用継続により更新されるケース
・賃貸借終了後、賃借人が使用を継続し、賃貸人が異議を述べない場合解約 期間の定めなく、
賃貸人から:6ヶ月以上前に正当事由必要
賃借人から:3ヶ月以上前に正当事由必要なし譲渡 賃貸人の同意が必要(借地権と異なり裁判所の許可不可) 建物転貸 期間満了:賃貸人が転借人に対抗するには通知が必要
解約申入れ:通知から6ヶ月経過後に契約終了対抗要件 賃借権の登記or建物の引渡し
定期借家権存続期間 上限なしで定めによる(1年未満の定めも定めの通り有効) 終了 期間が1年以上の場合、期間満了前1年~6ヶ月の間に通知することで終了を対抗可
(期間経過後の通知は、通知から6ヶ月経過で対抗可能に)
■借地借家法の「借地権」
1.借地権の存続期間は30年以上でなければなりません。
[ポイント]通常の借地契約の存続期間は、最短でも30年!存続期間を30年未満と約定した場合、その存続期間は30年とされます。また、契約で存続期間を定めなかった場合も30年となります。契約で30年以上を定めた場合は、その期間が存続期間となります。
2.存続期間の満了後、建物を有する借地権者が契約の更新を請求した場合、原則として前の契約と同じ条件で更新されたものとみなされます。
[ポイント] 借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合は、契約の更新はなされない!借地権者が契約の更新を請求しなくても、土地の使用を継続し、土地上に建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べない限り、借地契約は更新されます。
更新後の存続期間 → 最初の更新:最短20年 2回目以降:最短10年
3.借地権の存続期間満了前に、借地上の建物が滅失した場合でも、借地権は消滅しません。
[ポイント] 残存期間を超えて存続する建物を再築した場合、借地権の期間は延長される!ただし、借地権設定者の承諾が必要です。延長される借地権の期間は、承諾の日、または建物が築造された日の、いずれか早い日から20年となります。
4.借地契約が更新されない場合、借地権者は、借地権設定者に対して建物を時価で買い取るよう請求することができます(建物買取請求権)。
[ポイント] 借地権者の債務不履行により借地権契約が解除された場合は、建物買取請求権は認められない!
5.借地権の登記をしなくても、借地上の建物が登記されていれば、借地権を第三者に対抗することができます。
[ポイント] 建物の登記は、借地権者本人名義でしなければならない!
6.第三者に借地権を譲渡したり、借地を転貸するには、借地権設定者の承諾が必要です。
[ポイント] 借地権者の申立てにより、裁判所は借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる!借家権の譲渡・建物の転貸の場合は、裁判所の許可はありませんので区別しておいてください。
7.定期借地権という、期間の更新がない特殊な借地権を3つ覚えておいてください。
長期定期借地権:期間50年以上、建物買取請求権なし、書面必要(電磁的記録でも可)
建物譲渡特約付き借地権:期間30年以上、建物譲渡特約あり、書面不要。建物譲渡特約とは、期間満了後に借地上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を、あらかじめ決めておく特約です。
事業用借地権:期間10年以上50年未満(居住用不可)、建物買取請求権なし、書面(公正証書)必要
普通借地権対抗要件 登記:借地権の登記・借地上の建物の登記
掲示:登記ある建物滅失時(2年間のみ)譲渡・転貸 原則:賃貸人の承諾が必要
無断:賃貸人は解除可能
建物譲渡:借地人は裁判所の許可を求めること可(借家権と比較)
定期借地権存続期間 利用目的 契約方法 更新 一般定期借地権 50年以上 限定なし 書面(電子可) なし 建物譲渡特約付借地権 30年以上 限定なし 口頭でも可 地主が建物を買取る 事業用定期借地権 10年以上50年未満 事業用 公正証書 なし (普通借地権) 30年以上
(定めなしは30年、30年未満も30 年)建物所有 定めなし 上記参照
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