新築住宅に関する瑕疵担保履行法

宅建業法解説:新築住宅購入者を保護するため、確実に瑕疵の担保を履行してもらうための法律「住宅瑕疵担保履行法」。正式名称は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」といいます。尚、2020年4月から民法大改正により「瑕疵」→「不適合」となりましたが、法規内に瑕疵の定義を置くことで、住宅瑕疵担保履行法では「瑕疵」という文言のまま存置されています。より詳しい解説はこちら:住宅瑕疵担保履行法の完全解説

住宅瑕疵担保履行法の宅建解説

数年前、耐震構造計算書の偽装問題が世間を騒がせたのは記憶に新しいと思います。多数のマンションの耐震性が不足していることが明らかになり、建替えや大規模修繕が必要となりましたが、それら瑕疵担保責任を負うべきマンション分譲業者が倒産していたり資力がなかったりで、瑕疵担保責任が全く履行されないという事態が生じました。

そこで、新築住宅購入者を保護するため確実に瑕疵の担保を履行してもらうために制定されたのが、「住宅瑕疵担保履行法」です。住宅品質確保法が規定する新築住宅に関する10年間の瑕疵担保責任の履行を確実なものとするための規定となります。

住宅品質確保法  =責任を負わせることを規定した法律
住宅瑕疵担保履行法=発生した責任の履行を確実にするための法律

以下、宅建試験での出題ポイントです。


住宅瑕疵担保責任の対象

対象者:住宅事業者(宅建業者、建設業者、信託会社等で宅建業を営むもの)。以下、住宅事業者=宅建業者とさせていただきます。

対象物:新築住宅建設完了から1年を経過していない+居住者がいない← 両方必要)。事務所等は対象となりませんので注意です。

対象取引:宅建業者が自ら売主となり、非宅建業者が買主となる取引。賃貸の媒介は対象となりませんので注意です。

例題:宅建業者Aが、宅建業者Bの新築住宅の販売の代理や媒介を行う場合、A及びB共に住宅瑕疵担保履行法に基づく資力確保措置を講ずる義務がある。 → 誤り:資力確保措置義務が必要なのは、売主である宅建業者Bのみです


住宅瑕疵担保責任の方法

宅建業者は、自ら売主となり新築住宅を引き渡したら、瑕疵等が見つからなくてもあらかじめ保証金を供託or保険契約という以下2種類の方法のどちらかを行わなければなりません。

供託過去10年間の新築住宅の供給戸数に応じて算出した額(1戸目は2,000万円)を、供託所に保証金として供託します。供託をした場合はその旨の届出が必要であり、届出先は免許権者です。また、届出の時期は基準日(毎年3月31日)から3週間以内であり、供託の届出がない場合は、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以降、新たに新築住宅の売買契約をすることができなくなります

宅建合格!住宅瑕疵担保履行法

保険契約国土交通大臣が指定した保険法人と「有効期間を引渡しから10年以上」(保険金額2,000万円以上)とする保険契約を締結します。保険契約は上記基準日までに行えばよいのですが、保険の申込みは工事開始時までに申し込んでおく必要があります。届出に関する問題は供託と同様です。

宅建合格!住宅瑕疵担保履行法

・住宅全てについて供託、全てについて保険契約はもちろん、一部を供託で残りを保険契約という方法も可能です

・取得する新築住宅が、供託と保険どちらの資力措置がとられるかを35条の重要事項の説明37条書面に基づく書面の交付により買主に知らせる必要があります。プラス ⇒ 供託の場合、売買契約締結までに供託所の名称、所在地等を書面を交付して説明(宅建士である必要なし)することを要します。保険の場合、保険証書を交付するだけで説明義務はありません(保険契約の締結が完了していない場合、当該保険契約を締結する予定及び見込みの内容の概要について説明しなければなりません)。

尚、令和4年法改正により「供託所の所在地等を記載した書面」「保険証券またはこれに代わる書面」について電磁的記録による交付も可能となっています(供託所の説明書面を電子交付する場合は買主や発注者の承諾が必要)。

・供託から保険契約への変更はできますが、保険契約から供託に変更することはできないと考えられています


住宅瑕疵担保責任を負う期間

引渡しから10年(10年より短い期間を定めた特約は無効)
20年まで伸長可能ですが、供託や保険契約の適用はありません。


住宅瑕疵担保責任の内容

無過失責任
宅建業者による売買契約においては隠れたる瑕疵のみ

買主が、住宅の構造耐力上主要な部分に隠れた瑕疵を見つけた場合、契約解除(契約をした目的を達成できない場合)、損害賠償請求、瑕疵修補請求をすることができます。


住宅瑕疵担保履行法違反の監督処分

宅建業者が住宅瑕疵担保履行法の規定に違反し資力確保措置を行わない場合、指示処分または業務停止処分の対象となります。指示処分に従わないときは業務停止処分、業務停止処分事由に該当し情状が特に重いとき及び業務停止処分に違反したときは免許取消処分となります。

宅建業者が業務を行っている場所の知事も、指示処分と業務停止処分は行うことができるのが原則でしたが、住宅瑕疵担保履行法における処分権者は「監督権を有する者」(=免許権者である知事や国土交通大臣)となりますので、難問対策として少しだけ注意しておいてください。

・住宅販売瑕疵担保保証金の供託等の届出を怠った → 指示処分
・住宅販売瑕疵担保保証金について不適正または虚偽の届出をした → 指示処分
・契約締結までに住宅販売瑕疵担保保証金の供託説明を行わなかった → 指示処分
・契約締結制限があるのに新たに自ら売主となる売買契約を締結した → 業務停止処分
・平成21年10月1日以降、直近の基準日までの保証金を供託していない → 業務停止処分
・還付による不足額を供託していない → 業務停止処分


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監督と罰則
【宅建試験問題 平成22年ー問45】特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律に基づく住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結(以下この問において「資力確保措置」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.宅建業者は、自ら売主として宅建業者である買主との間で新築住宅の売買契約を締結し、当該住宅を引き渡す場合、資力確保措置を講ずる義務を負う。
2.自ら売主として新築住宅を販売する宅建業者は、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をする場合、宅建業者でない買主に対して供託所の所在地等について記載した書面の交付及び説明を、新築住宅を引き渡すまでに行えばよい。
3.宅建業者は、自ら売主として新築住宅を販売する場合だけでなく、新築住宅の売買の媒介をする場合においても、資力確保措置を講ずる義務を負う。
4.自ら売主として新築住宅を宅建業者でない買主に引き渡した宅建業者は、基準日ごとに、当該基準日に係る資力確保措置の状況について、その免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
1 誤:買主が宅建業者の場合は、資力確保措置の必要はない
2 誤:書面を交付して契約成立前までに行う(営業保証金などで出てきた供託所等の説明は口頭でも良かった点と比較)
3 誤:資力確保措置が必要なのは、新築住宅の売主である宅建業者
4 正:その通り(基準日から3週間以内)
【宅建試験問題 平成23年ー問45】特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律に基づく住宅販売瑕疵担保保証金の供託又は住宅販売瑕疵担保責任保険の締結(以下この問いにおいて「資力確保措置」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.宅建業者は、自ら売主として建設業者である買主との間で新築住宅の売買契約を締結し、当該住宅を引き渡す場合、資力確保措置を講ずる必要はない。
2.自ら売主として新築住宅を宅建業者でない買主に引き渡した宅建業者は、基準日に係る資力確保措置の状況の届出をしなければ、当該基準日以後、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結することができない。
3.自ら売主として新築住宅を販売する宅建業者は、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をする場合、当該住宅の売買契約をするまでに、当該住宅の買主に対し、供託所の所在地等について記載した書面を交付して説明しなければならない。
4.住宅販売瑕疵担保責任保険契約は、新築住宅の買主が保険料を支払うことを約し、住宅瑕疵担保責任保険法人と締結する保険契約であり、当該住宅の引渡しを受けた時から10年間、当該住宅の瑕疵によって生じた損害について保険金が支払われる。
1 誤:資力確保措置が不要となる「買主が宅建業者」の宅建業者は、まさに宅建業者を指します
2 誤:届出を怠った場合、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以降、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結することが禁止される
3 正:「住宅を引き渡すまで」「宅建士をもって」「口頭で良い」などのひっかけ問題に注意
4 誤:住宅販売瑕疵担保責任保険契約における保険料を支払うのは宅建業者