委任契約の成立から終了事由まで

宅建試験の民法解説:「委任」とは「他人に、契約などの法律行為をすることを頼むこと」です。自分では処理できないことを、信頼のおける人にやってもらうというわけです。より詳しい解説はこちら→委任の難問対策

委任の宅建解説

委任において頼む人を「委任者」頼まれる人を「受任者」といいます。委任契約は、無償が原則です(特約で有償も可)。


委任者の権利義務

・特約がない限り、受任者に報酬を支払う必要はない!
(報酬を支払う場合、支払い時期は委任終了後

・委任事務をするに必要な費用を、受任者に支払う義務がある!


受任者の権利義務

・有償の場合だけでなく、無償の場合も善良なる管理者の注意(善管注意義務)をもって、委任された事務を処理しなければならない!

委任とは、当事者間の信頼関係に基づく契約だからです。
善管注意義務:十分に注意して義務を行うこと⇔自己のためにすると同一の注意義務

・特約がない限り、委任者に報酬を請求することができない!

・有償委任において、受任者委任者の責任ではなく履行ができなくなったとき、または履行の中途で委任契約が終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる!(仕事の完成を目的とする請負と異なることを比較しておいてください)

・委任事務をするに必要な費用を、あらかじめ委任者に請求することができる!

受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事情があれば復受任者を選任することができる!


委任の終了

各当事者が、いつでも解除することができる!(注文者のみの請負と比較)

・当事者の一方が、相手方の不利な時期に解除したときは、その損害を賠償しなければならない!(=不利な時期でも解除できることを意味する)

他に委任契約の終了原因として、委任者の死亡や破産、受任者の死亡、破産、後見開始があります。「委任者の後見開始」では終了しないので注意してください。
  死亡 破産 後見開始
委任者 委任契約終了 委任契約終了 終了しない
受任者 委任契約終了 委任契約終了 委任契約終了


今回の委任は、覚えることが少なくてラッキーですね。しかし逆に、簡単すぎてあまり勉強せず、本番で答えが分からなくなってしまうということがあります。こういった簡単な問題が出題された場合は確実に取れるようにしておいてください。絶対に落とせません!


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請負 債務不履行
【宅建試験問題 昭和63年ー問4】委任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.受任者は、原則として委任者に対し定期的に委任事務処理の状況を報告しなければならない。
2.受任者は、報酬を受ける特約のないときは、自己の事務処理におけると同程度の注意義務で足り、善良な管理者としての注意義務までは負わない。
3.委任は、原則として各当事者がいつでもこれを解除することができる。
4.委任は、当事者の死亡又は破産による場合に限り当然に終了する。
1 誤:委任者の請求を受けた場合と、委任が終了したときに報告すればよい
2 誤:有償無償を問わず、善良なる管理者の注意義務を要する
3 正:委任契約は、理由を問わずにいつでも解除できる
4 誤:委任の終了事由は、委任者・受任者の死亡または破産、受任者の後見開始
【宅建試験問題 平成7年ー問9】Aは、Bにマンションの一室を賃貸するに当たり、管理を業としないCとの間で管理委託契約を締結して、Cに賃料取立て等の代理権を与えた。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

1.Cは、Aとの間で特約がなくても、Aに対して報酬の請求をすることができる。
2.Aは、CがBから取り立てた賃料を自己の生活費に消費したときは、Cに対して、その賃料額に、消費した日以後の利息を付した金額を支払うよう請求することができる。
3.Aが死亡したとき、委託契約は終了するが、急迫の事情がある場合においては、Cは、その管理業務を行う必要がある。
4.Cは、地震のため重傷を負った場合、Aの承諾を得ることなく、Dに委託して賃料の取立てをさせることができる。
1 誤:委任は原則として無償契約で、特約がない限り報酬を請求することはできない
2 正:受任者が、委任者に引き渡すべき金額を自己のために消費した場合、その消費した日以後の利息を支払う
3 正:委託契約終了後も急迫の事情があるときは、受託者や相続人等は、委託者またはその相続人等が委託事務を処理することができるようになるまでは必要な処分をしなければならない
4 正:委任者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときは、復委任をすることができる