不法行為で押さえる宅建過去問

宅建過去問:「不法行為」の重要過去問を見ていきます。他人から損害を与えられた場合、誰が何をできるのか?重要ですが出題ポイントは少ないので、頻出箇所を確実に押さえておけば大丈夫です。

不法行為の宅建過去問

Aは、宅建業者Bに媒介を依頼して、土地を買ったが、宅建業者Bの社員Cの虚偽の説明によって、損害を受けた。この場合の不法行為責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1994年の宅建過去問 問-7)

【問】Aは、Cの不法行為責任が成立しなければ、宅建業者Bに対して損害の賠償を求めることはできない。

使用者は、原則として、被用者がその事業の執行につき(=使用者から具体的な指示がなくとも外形から見て事業の範囲内ならば使用者責任は発生する)第三者に加えた損害を賠償しなければなりませんが、この使用者責任は、被用者の不法行為に基づく損害賠償責任が発生していることが前提となります。よって正しい肢となります。

【問】Aは、宅建業者Bに対して不法行為に基づく損害の賠償を請求した場合、Cに対して請求することはできない。

被害者は、使用者または被用者いずれか順に、または同時に損害賠償の全額を請求することができます。よって誤りです。

【問】Aは、Cの虚偽の説明が宅建業者Bの指示によるものでないときは、Cに対して損害の賠償を求めることができるが、宅建業者Bに対しては求めることができない。

使用者が、被用者の選任および監督について相当の注意を払っていたときは使用者責任は発生しません。本肢は宅建業者Bの指示でないとしても、相当の注意を払っていたとは言えないため、宅建業者Bに使用者責任が発生し誤りとなります。

【問】宅建業者Bは、Aに対して損害の賠償をした場合、Cに求償することはできない。

本来被用者が負担するべき損害を肩代わりで賠償しただけですので、使用者は、被用者に対して求償をすることができます。よって誤りです。ちなみに、被用者の故意や過失なども無関係です。


Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向かっている途中で交通事故を起こし、歩いていたCに危害を加えた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2012年の宅建過去問 問-9)

【問】BのCに対する損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、AのCに対する損害賠償義務が当然に消滅するものではない。

使用者責任が発生する場合、使用者と被用者は被害者に対して連帯債務を負うことになり、連帯債務者の一人に生じた事由は絶対効が認められる事由を除いて他の債務者に影響を及ぼしません(下記の共同不法行為も連帯債務者の関係となります)。よって正しい肢となります。

【問】Cが即死であった場合には、Cには事故による精神的な損害が発生する余地がないので、AはCの相続人に対して慰謝料についての損害賠償責任を負わない。

不法行為の被害者は損害の発生と同時に慰謝料請求権を取得、不法行為による慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなかった場合でも相続の対象となり、即死も対象となります。よって誤りです。

【問】Cが幼児である場合には、被害者側に過失があるときでも過失相殺が考慮されないので、AはCに発生した損害の全額を賠償しなければならない。

被害者にも過失がある場合はそれを考慮して賠償額を決定しますが、被害者が幼児等であるときは両親等の監督責任を考慮します。よって誤りです。


甲建物の占有者である(所有者ではない。)Aは、甲建物の壁が今にも剥離しそうであると分かっていたのに、甲建物の所有者に通知せず、そのまま放置するなど、損害発生の防止のため法律上要求される注意を行わなかった。そのために、壁が剥離して通行人Bが死亡した。この場合、Bの相続人からの不法行為に基づく損害賠償請求に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(2001年の宅建過去問 問-10)

【問】Bの相続人は、Aに対しては損害賠償請求ができるが、甲建物の所有者に対しては、損害賠償請求ができない。

工作物の設置や保存に瑕疵があった場合、工作物の占有者が不法行為責任を負い、占有者が損害発生防止に必要な注意をしていた場合は所有者が責任(無過失責任)を負います。本肢は占有者が損害発生防止に必要な注意を怠っていたため、責任を負うのは占有者となります。よって正しい肢となります。

【問】壁の剥離につき、壁の施工業者にも一部責任がある場合には、Aは、その施工業者に対して求償権を行使することができる。

建物の建築に携わる設計者や施工者は、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計・建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対して、または契約関係にない当該建物の居住者等に対しても損害賠償責任を負うことがあります。よって占有者や所有者は、損害原因について責任がある者に対して求償権を行使することができ、正しい肢となります。


Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし、A、B、C及びDが、Eに対し損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(2002年の宅建過去問 問-11)

【問】Aは、Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は、Eの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。

共同不法行為では、加害割合に関係なく、過失が軽微でも、加害者全員が被害者の損害全額を賠償すべき義務を負います(自己の負担部分を超えて損害を賠償した者は、超える部分に関して他の使用者に対して負担部分の割合で求償することができる)。よって誤りです。

【問】Aは、Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。

使用者が損害を負担した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上認められる限度において、加害者に対して損害賠償または求償請求をすることができます。よって正しい肢となります。

【問】Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。

負担部分を超える部分について、使用者Aの負担部分(=加害者Bの負担部分)の限度で求償することができます。よって正しい肢となります。


不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1992年の宅建過去問 問-9)

【問】不法行為の被害者は、損害賠償債権を自働債権として加害者に対する金銭返還債務と相殺することができない。

被害者の側から不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として相殺することは認められています。よって誤りです。尚、悪意ある不法行為に基づく損害賠償債務を受働債権=加害者側からの相殺は許されません。どうせお金を返してもらえないなら痛めつけて、損害賠償責任が発生しても相殺すればいい!などの防止です。改正民法により、過失による場合など悪意のない損害賠償債務であれば受働債権として相殺することも可能となった点に注意。

【問】不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者が催告をするまでもなく、その損害の発生のときから遅滞に陥る。

不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に遅滞に陥ります。よって正しい肢となります。被害者または法定代理人が加害者を知ったときから3年人の生命または身体を害する不法行為の損害賠償請求権は5年)または不法行為のときから20年行使しないと消滅時効にかかる点にも注意。被害者が複数人いる場合は加害行為が終わったときから一括して消滅時効が進行するのではなく、それぞれが知ったときから別個に進行するということですね(この消滅時効期間は、加害者が海外に在住している間も進行します)。


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