不動産登記法で押さえる宅建過去問

宅建過去問:「不動産登記法」の重要過去問を見ていきます。覚えることが細かい割には1問しか出題されません。しかし、裏を返せば確実に1問は出題されるということです。範囲が広くどこから出題されるか分からない権利関係で1問が約束されています。1点のために不動産登記法に時間を割くかどうかは勉強の進み具合によりますが、難易度は高くないので、できればここで1点を確保しておきたいところです。

不動産登記法の宅建過去問

不動産登記に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(1993年の宅建過去問 問15)

【問】登記は、当事者の申請又は官公署の嘱託がある場合でなければ、することができない。

登記は、法令に別段の定めがある場合を除いて当事者の申請または官庁もしくは公署の嘱託がなければすることができません。例外(法令による別段の定め)として表示の登記は職権での登記も認められます。よって誤りです。尚、登記は原則として登記権利者と登記義務者の共同申請となり、売買契約に基づく所有権移転登記の場合、買主の売買代金支払債務と売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情のない限り同時履行の関係に立ちます

【問】登記名義人の氏名等の変更の登記の申請は、登記名義人が単独ですることができる。

登記は原則として登記権利者と登記義務者が共同して行いますが、例外として登記名義人の表示の変更登記は、登記名義人が単独で申請することができます。単独申請ができる主なものとして、相続・合併による権利の移転登記登記名義人の氏名・名称・住所の変更更正登記所有権保存登記判決による登記、収用による所有権移転登記、所有権抹消登記(所有権移転登記がない場合)、信託登記あたりを覚えておきましょう。よって正しい肢となります。

【問】申請情報と併せて仮登記義務者の承諾を証する情報を提供してする所有権移転請求権の仮登記の申請は、仮登記権利者及び仮登記義務者が共同してすることを要する。

承諾書を添付して行う仮登記の申請も、仮登記名義人が単独で申請することができます。よって誤りです。

【問】登記権利者は、その者の所有権を確認する確定判決に基づき、売買による所有権移転の登記の申請を単独ですることができる。

登記を移転することを命じる判決に基づいて登記を申請する場合も、登記権利者が単独で申請することができます。しかし、登記移転を命じる判決が必要で、所有権確認判決である本肢は誤りとなります。


不動産登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(1988年の宅建過去問 問16)

【問】登記原因について第三者の許可を要するときは、原則として申請情報と併せて、当該第三者の許可を証する書面を提供する必要がある。

権利に関する登記申請は、原則として申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供する必要があり、登記原因について第三者の許可や同意、承諾を要するときは、これを証する書面を添付しなければなりません。よって正しい肢となります。尚、表示登記で申請情報や登記原因を証する情報を提供する必要はありませんので、ひっかけに注意。

【問】建物を新築したときは、所有者は1月以内に建物の表示の登記を申請しなければならないが、物権の変動が生じたときの登記の申請期間については、特段の定めはない。

建物の新築や床面積の変更などで表示の変更登記が必要な場合は1ヶ月以内に申請しなければなりませんが、物権変動が生じたときの登記の申請期間については特段の定めはありません(表示の登記がなされた場合、登記所は、10日以内にその旨を当該土地または家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない)。よって正しい肢となります。建物表示登記事項=建物の所在地、家屋番号、建物の種類・構造・床面積、建物名がある場合はその名称、建物が共用部分であるときはその旨(住所変更登記は表示変更登記とは別物なので1ヶ月以内という制限がない点に注意)。尚、所在地番や床面積等が実際のものと少しだけ相違していても、建物の同一性が否定されるようなものでなければ対抗力のある登記として有効に認められます。


不動産登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(1989年の宅建過去問 問15)

【問】同一の登記所の管轄に属する数個の不動産に関する登記を申請する場合、登記原因及び登記の目的が同一であるときに限り、同一の申請情報で登記を申請することができる。

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じて不動産ごとに作成して提供しなければなりませんが、同一登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について登記の目的・登記原因・日付が同一であるときは、この限りではありません。よって正しい肢となります。

【問】所有権の登記名義人が登記義務者として登記を書面申請する場合に提出する印鑑証明書は、その作成後6月以内のものでなければならない。

印鑑証明書は、作成後3ヵ月以内のものでなければなりません。よって誤りです。


不動産の登記事項証明書の交付の請求に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(2010年の宅建過去問 問14)

【問】登記事項証明書の交付を請求する場合は、書面をもって作成された登記事項証明書の交付のほか、電磁的記録をもって作成された登記事項証明書の交付を請求することもできる。

電磁的記録で作成された登記事項証明書は存在せず、登記事項証明書は必ず書面となります。よって誤りです。登記事項証明書の交付請求はオンラインでも可能な点と区別。つまり交付請求は郵送・窓口・オンラインで、実際の交付は書面しかないため郵送または窓口となりますね。

【問】登記事項証明書の交付を請求するに当たり、請求人は、利害関係を有することを明らかにする必要はない。

登記事項証明書の交付請求は誰でも可能です。よって正しい肢となります。登記申請書の閲覧は、請求人が利害関係を有する部分に限りすることができる点も頭の片隅に入れておいてください(土地所在図・地積測量図・地役権図面・建物図面・各階平面図は誰でも閲覧可能な点と比較)。

【問】登記事項証明書の交付を請求する場合は、登記記録に記録されている事項の全部が記載されたもののほか、登記記録に記録されている事項のうち、現に効力を有するもののみが記載されたものを請求することもできる。

手数料を納付して誰でも登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面の交付を請求することができ、現に効力を有するもののみが記載された証明書(現在事項証明書)の交付請求も可能です。よって正しい肢となります。


不動産登記の登記識別情報の提供に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。ただし、申請人が登記識別情報を提供することができないことについて正当な理由がある場合については考慮しないものとする。(1998年の宅建過去問 問14)

【問】相続による所有権移転登記を申請する場合には、申請情報と併せて被相続人の所有権の登記の登記識別情報を提供しなければならない。

相続または法人の合併による権利の移転登記は登記権利者が単独で申請することができ、登記識別情報の提供は不要となります。よって誤りです。この「単独申請は登記識別情報の提供は不要」が原則となりますが、以下3問は共同申請でなくてもor単独申請でも登記識別情報の提供が必要となる例外となります。例外は次の3つだけ押さえておけば大丈夫でしょう。

【問】抵当権の順位変更の登記を申請する場合には、申請情報と併せて順位を変更する各抵当権の登記の登記識別情報を提供しなければならない。

抵当権や質権の順位変更登記(合同申請)をする場合には、登記識別情報の提供が必要となります。よって正しい肢となります。

【問】所有権保存登記の抹消をその所有権の登記名義人が申請する場合には、申請情報と併せてその登記の登記識別情報を提供しなければならない。

所有権保存登記の抹消は所有権の登記名義人が単独で申請することができますが、登記識別情報の提供が必要となります。よって正しい肢となります。

【問】所有権の登記がある二筆の土地の合筆登記を申請する場合には、申請情報と併せて合筆前のいずれか一筆の土地の所有権の登記の登記識別情報を提供しなければならない。

合筆登記(単独申請可能)では、合筆前のいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供すれば足ります。よって正しい肢となります。


不動産登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(2016年の宅建過去問 問14)

【問】登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。

登記ができるのは、所有権・地上権・永小作権・地役権・質権・抵当権・賃借権などの9種類です。よって正しい肢となります。宅建試験的に、賃借権の設定登記で「賃料」「敷金がある旨」等が登記事項である点に少し注意。

【問】建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人は、滅失した日から1ヵ月以内に当該建物の滅失登記を申請しなければなりません。よって正しい肢となります。


区分建物についての登記に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(1996年の宅建過去問 問16)

【問】区分建物の表題登記は、その一棟の建物に属する他の区分建物の表題登記とともに申請しなければならない。

区分建物が属する一棟の建物が新築された場合における当該区分建物の表題登記申請は、当該新築された一棟の建物についての表題登記の申請と併せて行う必要があります。よって正しい肢となります。(相続人等の一般承継人も被承継人を表題部所有者とする表題登記を申請することが可能ですが、表題登記がされていない区分建物を建築者から取得した者に、当該区分建物の表題登記を申請する義務はありません

【問】区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。

表題部所有者から所有権を取得した者も、区分建物の所有権保存登記を申請することができます(敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾が必要)。よって正しい肢となります。

【問】区分建物が規約による共用部分である旨の登記は、当該建物の登記用紙の表題部にされる。

区分建物が規約共用部分である旨の登記は、表題部(専有部分の建物の表示)にされます。よって正しい肢となります。

【問】登記官は、区分建物について敷地権の表示の登記をしたときは、敷地権の目的たる土地の登記記録の表題部に敷地権の目的となった旨の登記をしなければならない。

登記官は職権で、敷地権の目的たる土地の登記記録の権利部の相当区(敷地権が所有権であれば甲区、地上権や賃借権であれば乙区)に敷地権である旨の登記を行います。表題部ではなく、誤りとなります。


不動産登記の申請に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(2008年の宅建過去問 問16)

【問】所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

所有権に関する仮登記の本登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾を得る必要があります。よって正しい肢となります。

【問】仮登記の登記義務者の承諾がある場合であっても、仮登記権利者は単独で当該仮登記の申請をすることができない。

登記義務者の承諾があるとき裁判所による仮登記を命ずる処分があるときは、仮登記権利者は単独で当該仮登記の申請をすることができます。よって誤りです。仮登記の抹消が単独でできる点も頭の片隅に。

【問】二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、持分が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。

持分が相互に異なる土地の合筆の登記はできません。よって正しい肢となります。

【問】二筆の土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人が同じであっても、地目が相互に異なる土地の合筆の登記は、申請することができない。

地目が相互に異なる土地の合筆の登記はできません(一筆の土地の一部が別の地目となったとき、一筆の土地の一部が地番区域を異にするに至ったときは、登記官が職権で分筆登記を行います)。よって正しい肢となります。他に合筆登記ができないものとして、隣接していない土地登記名義人が異なる土地所有権の登記がある土地とない土地所有権の登記以外の権利(地役権を除く)の登記がある土地が挙げられます。4つめ、抵当権や地上権などの権利の登記がある土地について合筆登記はできませんが、分筆登記は可能である点には注意しておいてください。


不動産登記に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(2003年の宅建過去問 問15)

【問】不動産の登記申請において、申請情報の内容が登記原因を証する情報の内容と合致していない場合には、申請人が即日にこれを補正したときでも、登記官は、理由を付した決定をもって、当該申請を却下しなければならない。

申請情報の内容が登記原因を証する情報の内容と合致していない場合でも、登記官が定めた相当の期間内に補正可能であれば却下する必要はありません。よって誤りです。補正不可能な不動産所在地が申請を受けた登記所の管轄に属しないときは、登記官は、理由を付した決定をもって登記申請を却下しなければならない点と比較。


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