媒介契約と代理契約の完全解説

宅建業法の完全解説:宅建業者がお客さんを仲介する「媒介・代理契約」について解説します。一般媒介と専任媒介の違いを明確に!

媒介・代理契約の完全解説

媒介とは、一般的なイメージとしては不動産の「仲介」ですね。媒介と代理の違いは、宅建業者に契約締結権限があるかないか、という点だけです。

たとえば媒介の場合、土地を売りたい人から宅建業者が依頼を受け、その土地を買いたい人を見つけたとしても、その人と直接契約を結ぶことはできず、依頼人(売主)と買主との間に入って両者が契約を結ぶ機会を作るにすぎません。これに対して代理の場合、宅建業者は土地を買いたい人を見つけてきて、その人と依頼人の土地について、依頼人を売主とする売買契約を結ぶことができます。

代理契約は媒介契約の規定を準用しているため、「媒介」の部分をそのまま「代理」に置き換えていただければ問題なく、報酬計算以外では特に意識する必要はありません

尚、媒介=一般に宅建業者が売主や買主から依頼を受け仲介すること(または賃貸借契約の仲介)ですが、ここでの媒介=不動産の所有者(売主)からの依頼と考えてください。
  一般媒介 専任媒介 専属専任
他業者に重ねて依頼 × ×
自分で見つけて契約 ×


一般媒介

他の宅建業者にも重ねて媒介契約を依頼することができる媒介契約です。これには、他に依頼している宅建業者が誰なのかを明示する「明示型」と、明示義務のない「非明示型」の2種類が存在するということを覚えておいてください。つまり、他に依頼した宅建業者を必ずしも明示する必要はありません。逆に「他の宅建業者に媒介を依頼した際は必ず通知する」などといった特約も有効となります。

指定流通機構への登録をすることもできますが、義務ではありません。有効期間の制限はなく、有効期間を定めた場合に自動更新する旨の特約も有効で、定期的な報告義務もありません(申込みがあったときは報告必要)。


専任媒介

依頼者が自分で見つけた相手とは契約できますが、原則として1人だけの宅建業者にしか依頼することができない媒介契約が専任媒介です。専任媒介契約を結ぶと、依頼者は、他の宅建業者とは媒介契約も代理契約も結ぶことができません。これにより専任媒介契約を結んだ宅建業者は、他の宅建業者に仕事を取られる心配がなくなります。

しかし、だからと言ってその宅建業者にダラダラと仕事をされては困ります。よって専任媒介契約は、その有効期間が3ヶ月以内に限定されます(これより長い期間を定めても3ヶ月に短縮)。有効期間が切れた場合は、依頼者からの申出により、その期間を更新することができます(更新期間も3ヶ月以内。自動更新は不可)。

また、専任媒介契約を結んだ宅建業者は、依頼された取引の進み具合(=業務処理状況)を、2週間に1回以上、依頼者に報告する必要があります(口頭やメールでも可)。3週間に1回や、1ヶ月に2回など、依頼者に不利な特約は無効(=10日に1回など依頼者に有利なら有効)となりますので、これも覚えておいてください。また、依頼された取引について申込みがあった場合は、その都度、遅滞なく報告することを要します。依頼者が希望したときのみ報告、契約が成立した申込みについてのみ報告など、これに反する特約も無効となります。

そして専任媒介契約を結んだ宅建業者の相手方の探し方ですが、これは指定流通機構(レインズ)に、依頼を受けた宅地または建物の所在や規模、売買価額等を登録するという方法で行われます。この登録は、専任媒介契約締結日から7日以内(宅建業者の休業日を除く)に行う必要があります。登録を怠ると指示処分の対象となりますが、罰則はありません。

この登録をした宅建業者は、指定流通機構から発行される登録済証を、遅滞なく依頼者に引き渡さなければなりません。宅建業者が作成するのではなく、指定流通機構が発行した書面なので注意(レインズ登録時の交付書面=依頼者の承諾を得て電磁的記録も可能となりました!R4法改正)。そしてこの物件について売買・交換契約が成立した場合は、遅滞なく約成立年月日や取引価格等を指定流通機構に通知します。たまに出題される、物件所有者の氏名などは通知事項ではありませんので注意。
登録事項 所在・規模・形質、売買価額、主要な法令制限、専属専任媒介契約である場合はその旨
通知事項 登録番号、契約成立年月日取引価格


専属専任媒介

専任媒介を少し厳しくして、自分で見つけた相手とも契約ができない専任媒介契約です(親族等でも不可)。有効期間や相手の探し方などは専任媒介と同じですが、異なる点が2つあります。

まず、業務処理状況の報告が、1週間に1回以上必要です(口頭やメール可。申し込みがあれば遅滞なく報告)。そして、指定流通機構への登録は、専属専任媒介契約締結日から5日以内(宅建業者の休業日を除く)に行います。この2点は必ず押さえておいてください。尚、登録を怠ると指示処分の対象となります。

業務処理状況の報告=専任媒介2週間に1回以上、専属専任媒介1週間に1回以上
指定流通機構への登録=宅建業者の休業日を除き、専任媒介7日以内、専属専任媒介5日以内
業務処理状況の報告は、宅建業者の休業日は除かれない点に注意。
  専任媒介 専属専任媒介
有効期間 3ヶ月以内(依頼者からの申出による更新も3ヶ月以内) 同左
指定流通機構への登録 媒介契約締結日から7日以内(宅建業者の休業日を除く) 媒介契約締結日から5日以内(宅建業者の休業日を除く)
業務処理状況の報告 2週間に1回以上(申し込みがあれば遅滞なく報告) 1週間に1回以上(申し込みがあれば遅滞なく報告)


媒介契約書面(34条の2書面)

宅建業者は、売買または交換の媒介契約を締結した場合、一定事項を記載した書面を作成し、記名押印して遅滞なく依頼者に交付しなければなりません。35条書面、37条書面は押印不要となりましたが、媒介契約書面は従来通り記名+押印が必要ですので注意してください。以下、インプリっぽく出題ポイントです。

・宅建士の記名押印ではなく、宅建業者の記名押印を要する!(=従業者でOK)
貸借の媒介に媒介契約書面は不要である!
依頼者が宅建業者である場合も、媒介契約書面の交付は必要である!
・媒介契約書面の交付時に、説明をする必要はない
依頼者の承諾を得て電磁的記録による方法で交付することもできる!(R4法改正)
  35条書面 37条書面 媒介契約書面
いつ 契約成立前 契約成立後に遅滞なく 契約成立後に遅滞なく
誰に 買主や借主(交換は両当事者) 契約の両当事者 契約の依頼者(貸借は不要
交付場所 どこでも どこでも どこでも
記名押印 宅建士(押印不要 宅建士(押印不要 宅建業者
説明 必要(相手が宅建業者なら不要) 不要 不要


媒介契約書面記載事項

宅建業者は、媒介契約書面に以下の事項を記載します。2.4.6番と近年の法改正である8番は必ず覚えておいてください。

1.宅地建物を特定するために必要な表示
所在地や面積等ですね。

2.売買すべき価額または評価額
宅建業者が意見を述べる場合は根拠を明らかにする必要がありますが、その方法は宅建士である必要はなく、口頭でも構いません(実務では一般的に書面で提示するので、既に宅建業者で働いている方は注意)。またこの価額・評価額は、依頼者からの要求がなくても根拠を明らかにする必要があります。

3.一般・専任・専属専任媒介の区別
一般か専任かの区別は媒介契約書面記載事項ですが、広告時や注文時の取引態様の別では明示する必要はありませんので、ひっかけ問題に注意。一般媒介契約の場合は、明示する義務があるか否かも記載します。専任媒介契約の場合は、依頼者が他の宅建業者によって契約を締結したときの措置も記載します。

4.報酬額
よく35条書面や37条書面の記載事項というひっかけ問題が出題されますが、宅建業者が受け取る報酬額は、媒介契約書面の記載事項です。報酬額が決まっていない場合でもその旨を記載し、省略することはできません。

5.媒介契約の有効期間
専任媒介契約の3ヶ月は基本として、難問対策を一つ。「有効期間内に目的物件の売却ができなかったときは、依頼者の希望により媒介価格で媒介業者が買い取る」旨の特約も有効となります。

6.解除に関する事項・契約違反の場合の措置・標準媒介契約約款に基づくか否かの別
標準媒介契約約款とは、国土交通省が定めた媒介契約の見本のようなものです。この標準媒介契約約款を用いると、一般媒介の有効期間も3ヶ月以内となるなど、宅建業法の規定にない制限も加わります。また契約違反の場合の措置として、専任媒介において「依頼者は、他の宅建業者の媒介代理により契約を成立させたときは違約金を支払う」といった依頼者に不利な特約も有効となります。

7.指定流通機構への登録に関する事項
登録が任意である一般媒介でも記載事項であるという点に注意。

8.依頼者に対する建物状況調査(インスペクション)実施者のあっせんに関する事項
既存建物において建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項は記載事項ですが、媒介をする宅建業者自身に建物状況調査の実施は義務付けられていませんので注意。建物状況調査を実施する者=経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者(建築士や講習修了者)。

また令和6年法改正により、標準媒介契約約款を採用して既存住宅の売買の媒介契約を締結した場合、建物状況調査をする者のあっせんを「無」とするときは、媒介契約書面にその理由を記載しなければならないとされました(既に建物状況調査が実施されているため、物件所有者から建物状況調査を実施する同意が得られないため…などなど)


近年の宅建本試験問題(皆さん直近の過去問は解く機会が多いと思いますので、古すぎず新しすぎない練習問題を1つ。言い回しなど、雰囲気をチェックしておきましょう)

宅建業者Aは、Bから、Bが所有し居住している甲住宅の売却について媒介の依頼を受けた。この場合における次の記述のうち、宅建業法の規定によれば、正しいものはどれか2018-33

1.宅建業者Aが甲住宅について、宅建業法第34条の2第1項第4号に規定する建物状況調査の制度概要を紹介し、Bが同調査を実施する者のあっせんを希望しなかった場合、Aは、同項の規定に基づき交付すべき書面に同調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載する必要はない。
2.宅建業者Aは、Bとの間で専属専任媒介契約を締結した場合、当該媒介契約締結日から7日以内(休業日を含まない)に、指定流通機構に甲住宅の所在等を登録しなければならない。
3.宅建業者Aは、甲住宅の評価額についての根拠を明らかにするため周辺の取引事例の調査をした場合、当該調査の実施についてBの承諾を得ていなくても、同調査に要した費用をBに請求することができる。
4.宅建業者AとBの間で専任媒介契約を締結した場合、Aは、宅建業法第34条の2第1項の規定に基づき交付すべき書面に、BがA以外の宅建業者の媒介又は代理によって売買又は交換の契約を成立させたときの措置について記載しなければならない。

建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項は、相手方の希望の有無に関わらず、媒介契約書面の記載事項となります(希望によりあっせんを「無」とするときは、「希望がなかったため」と理由を記載する)。専属専任媒介契約の登録機関は、宅建業者の休業日を除いて5日以内です。専属でない専任媒介契約が7日以内ですね。調査費用を依頼者に請求することはできません。専任媒介契約では依頼者が他の宅建業者によって契約を締結したときの措置を記載しますので、条文通りの4番が正解となります。簡単ですね!


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  一般媒介 専任媒介 専属専任媒介
専任性 自由 他業者依頼不可
自己発見取引は可
他業者依頼不可
自己発見取引不可
有効期間 自由 3ヶ月以内 3ヶ月以内
契約更新 自動更新も可 依頼者の申出により可 依頼者の申出により可
媒介契約書面 必要 必要 必要
業務処理状況の報告 不要 2週間に1回以上 1週間に1回以上
申込み時の報告 必要 必要 必要
指定流通機構への登録 任意 休業日を除き7日以内 休業日を除き5日以内