【相殺】で押さえる宅建過去問

宅建過去問:「相殺」の重要過去問を見ていきます。相殺だけで丸々1問という可能性は低いですが、肢の1つとして出題されることもありますのでしっかり覚えておいてください。では、相殺のポイントが凝縮された問題を少しだけ、ササッと見ていきましょう!

相殺の宅建過去問

AはBに対して土地を1,000万円で売却し、その代金債権を有している。一方BはAに対して同じく1,000万円の貸金債権を有している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1987年の宅建過去問 問-10)

【問】土地代金の支払い場所が鹿児島、貸金の返済場所が青森となっており、両者の債務の履行地が異なる場合は、相殺することはできない。

相殺は、債権者と債務者が相互に同種の債権・債務を有する場合に可能であり、履行地が同一である必要はありません。よって誤りです。

【問】両者の債権が相殺適状になった後、Aの代金債権について消滅時効が完成した。この場合には、Aのほうから相殺を主張することはできない。

時効によって消滅した債権でも、その消滅以前に相殺適状にあった場合、債権者は相殺をすることができます。よって誤りです。

【問】両者の債権が相殺適状になった後、AがBに対して相殺の意思表示をしたときは、その効力は相殺適状が生じた時に遡って発生する。

相殺の効力は、双方の債権が相殺適状を生じたときに遡って生じます。よって正しい肢となります。相殺の意思表示をしたときに遡って生じる、というひっかけ問題に注意してください。

【問】両者の債務の履行期限が異なる場合は、双方の債務の弁済期が到来した後にのみ相殺が可能である。

債権者は、自分の有する債権が弁済期に達していれば、自分に対する債権が弁済期に達していなくても、期限の利益を放棄して相殺をすることができます。よって誤りです。


Aは、B所有の建物を賃借し、毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し、敷金は賃貸借終了後明渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺についての次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2004年の宅建過去問 問-8)

【問】Aは、Bが支払不能に陥った場合は、特段の合意がなくても、Bに対する敷金返還請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。

上述の通り、受動債権に関しては期限の利益を放棄して弁済期前に相殺することができますが、敷金の返還は明渡し完了後とされていますので、弁済期が到来していない債権を自働債権として弁済期の到来した賃料債権と相殺することはできません(Bの支払不能は無関係)。よって誤りです。

【問】AがBに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Aは、このBに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。

不法行為による損害賠償請求権を自働債権として相殺することは可能です。よって誤りです。改正民法により、過失等による不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として相殺することも可能となりましたが、悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権を受働債権として相殺を主張することはできない点は必ず覚えておいてください。

【問】AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており、その弁済期が平成16年8月31日に到来する場合、同年8月20日にBのAに対するこの賃料債権に対する差押があったとしても、Aは、同年8月31日に、このBに対する貸付金債権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。

AのBに対する債権が差押え後に取得したものであれば相殺は認められませんが、差押え前に取得していればAから相殺可能(受働債権との弁済期は関係なし)です。債権が差し押さえられても、それ以前に生じている相殺の抗弁は消滅しません。よって正しい肢となります。


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