【時効】で押さえる宅建過去問

宅建過去問:「時効」の重要過去問を見ていきます。近年出題が少なめですが、元々頻出分野なので要注意です。取得時効に消滅時効と少しややこしい所ですが、できる限りマスターしておいてください。

時効の宅建過去問

Aが有する権利の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2005年の宅建過去問 問-4)

【問】Aが有する所有権は、取得のときから20年間行使しなかった場合、時効により消滅する。

所有権は消滅時効にはかかりません。よって誤りです。

【問】AのBに対する債権を被担保債権として、AがB所有の土地に抵当権を有している場合、被担保債権が時効により消滅するか否かにかかわらず、設定時から10年が経過すれば、抵当権はBに対しては時効により消滅する。

抵当権は、債務者および抵当権設定者以外の者に対しては、被担保債権と離れて単独で20年の時効によって消滅します。よって誤りです。改正民法により債権の消滅時効が、権利を行使できることを知ったときから5年、または権利を行使できるときから10年(債権または所有権以外の財産権は20年、生命や身体の侵害への損害賠償請求権は20年)、判決で確定した権利は10年となった点に注意。

【問】AのCに対する債権が、CのAに対する債権と相殺できる状態であったにもかかわらず、Aが相殺することなく放置していたためにAのCに対する債権が時効により消滅した場合、Aは相殺することはできない。

時効によって消滅した債権でも、消滅以前に相殺敵状にあった場合、その債権者は相殺をすることができます。よって誤りです。

【問】AのDに対する債権について、Dが消滅時効の完成後にAに対して債務を承認した場合には、Dが時効完成の事実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援用することはできない。

判例によれば、債務者が消滅時効の完成後に債権者に対して債務の承認をした場合、時効完成の事実を知らなかったとしても、もはや時効を援用できないとされています。よって正しい肢となります。


AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1997年の宅建過去問 問-4)

【問】Aが弁済期を定めないで貸し付けた場合、Aの債権は、いつまでも時効によって消滅することはない。

弁済期の定めのない消費貸借の場合、債権者は相当の期間を定めて返還の催告をすることができ、債権成立後、この相当期間経過時から消滅時効が進行します。よって誤りです。改正民法により、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意から1年を経過するまで時効は完成しないとする規定が新設された点にも注意しておいてください。

【問】Cが自己所有の不動産にAの債権の担保として抵当権を設定(物上保証)している場合、Cは、Aの債権の消滅時効を援用してAに抵当権の抹消を求めることができる。

時効の援用ができるのは当事者であり、消滅時効においては保証人、物上保証人、第三取得者、権利の消滅について正当利益を有する者も当事者に当たります。よって正しい肢となります。

【問】AがBの不動産に抵当権を有している場合に、Dがこの不動産に対して強制執行の手続を行ったときは、Aがその手続に債権の届出をしただけで、Aの債権の時効完成は猶予される。

時効の完成猶予事由には、請求、支払督促、破産手続参加、強制執行、仮差押え、仮処分、催告、承認(即更新)などがありますが、他の債権者が行った強制執行手続きに対して自らの債権を届け出たにすぎない場合は完成猶予事由に該当しません。よって誤りです。


AのBに対する債権(連帯保証人C)の時効の完成猶予又は更新に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(1995年の宅建過去問 問-3)

【問】AがBに対して訴訟により弁済を求めても、その訴えが却下された場合は、時効更新の効力は生じない。

裁判上の請求をした場合、裁判が終了するまでの間は消滅時効の完成が猶予されますが、訴えの却下取下げ棄却判決が下された場合には時効は更新されず、却下等の後6ヶ月間、時効の完成が猶予されるに過ぎません(和解は確定判決と同じ効果=完成猶予や更新の効果あり)。よって正しい肢となります。


BはA所有の土地を占有している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1987年の宅建過去問 問-8)

【問】Bはこの土地がA所有のものであることは知っていたが、占有を続け、ついにこの土地の所有権を時効により取得した。この場合において、Bが所有権を取得した時点は、時効が完成した時である。

時効の効力はその起算日に遡るため、BがA所有の土地の占有を開始したときに遡って所有権を取得します。よって誤りです。

【問】Bはこの土地を賃借権に基づき占有していたが、今までに一度もAより賃料を請求されたことがない。この場合において、Bはこの土地の占有を20年間継続しさえすれば、時効により所有権を取得することができる。

取得時効の成立には、所有の意思をもって他人の物を一定期間占有することが必要です。よって所有の意思がない本肢は時効取得することはなく、誤りとなります。


所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1998年の宅建過去問 問-2)

【問】Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身がその後5年問占有しただけでは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。

相続人は、被相続人の占有していた財産の占有を承継します。したがって相続人は20年間所有の意思をもって平穏かつ公然に土地を占有していることになるので、時効により土地の所有権を取得することができます(善意無過失かどうかも、最初の占有者が占有を開始した時点で判定されます)。よって誤りです。

【問】Bが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。

Bは甲土地をCに賃貸していても甲土地の占有を失うわけではありません。したがってBは、平穏かつ公然に所有の意思をもって20年間占有していれば時効取得ができます。よって誤りです。

【問】DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。

取得時効により所有権を取得した者は、登記がなくても時効完成前に土地を譲り受けた者に所有権取得を対抗できます。よって正しい肢となります。時効完成後(=既にBのもの)に譲り受けた者とは、普通に対抗関係ですね。


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