免許基準の完全解説

宅建業法の完全解説:宅建業者となるための宅建免許の申請と免許基準」について解説します。

宅建免許と免許基準の完全解説

宅建業を営むためには、宅建業の「免許」が必要です。後述する宅建士証は個人に交付されるのに対し、宅建免許は「個人事業者や会社(法人)」=宅建業者に与えられます。免許基準は毎年のように出題されますので、しっかりとマスターしておいてください。

では、順番に見ていきましょう!


宅建免許の申請

宅建業者は、都道府県知事または国土交通大臣に対して宅建免許の申請を行います。都道府県知事または国土交通大臣のいずれかが、宅建業の免許を与えるのです。この宅建免許を与える者を「免許権者」といいます。この呼び名はよく出てきますので覚えておいてください。

では、これから宅建業者になろうとする者は、どちらの免許権者に宅建免許の申請をすれば良いのでしょうか?これは、宅建業者が自由に選べるわけではありません。「事務所の場所によって決められます(業務を行う場所は関係ありません)。全ての事務所が1つの都道府県内にある場合は、その都道府県知事の宅建免許を受けます。事務所が複数の都道府県に存在する場合は、国土交通大臣の宅建免許を受けます。少し練習してみましょう。

A県に本店と支店がある → A県知事の宅建免許
B県に本店と支店がある → B県知事の宅建免許
A県に本店、B県に支店がある → 国土交通大臣の宅建免許
A県に本店、B県とC県に支店がある → 国土交通大臣の宅建免許
A県に本店と3つの支店がありA県とB県で宅建業務を行う → A県知事の宅建免許

事務所の数も関係ありません。すごく簡単ですね。ここが本試験で出題されたら確実に得点してください。また、この宅建免許の申請で1つだけ注意点があります。

宅建免許を申請するには、免許申請書というものを免許権者に提出するのですが、国土交通大臣の宅建免許を受ける場合には、この免許申請書を、主たる事務所(本店)の所在地を管轄する都道府県知事を経由して提出するのです。つまり、A県に本店、B県に支店がある場合は、A県知事に免許申請書を見せてから国土交通大臣に提出して宅建免許を受けるということです。これは本試験でよく出題されますので覚えておいてください。


免許基準

誰でも無条件に宅建免許を受けることができたら大変です。宅建業者として「ふさわしくない者」とはどのような者でしょうか?(=免許基準)

量が多くて大変ですが、14種類自体についてここで無理に覚えなくても、今後あちこちで出てきますので自然と身につくところです。とりあえず全体像を把握して個別の注意点をチェックしておいてください。

以下、宅建免許を受けることができない者たちです。


1.心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの、復権を得ていない破産者

一括りの「成年被後見人、被保佐人」から2020年の法改正により「精神機能の障害により宅建業を適正に営むに当たって必要な認知、判断、意思疎通を適切に行うことができない者」に変更されました。個人の宅建業者(未成年者を除く)が宅建業に関し行った行為は、行為能力の制限によって取り消すことはできません。← 熱い新規定です

詳しくは下記10番でお話しますが、未成年者は宅建業者になれるという点にも注意です。破産者も、復権を得れば「ただちに」宅建免許を受けることができます。復権から5年というひっかけ問題に注意してください。


2.禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年、または時効の完成などにより刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

禁錮以上の刑とは、禁錮、懲役、死刑です。死刑は死刑ですから、禁錮と懲役を覚えておいてください。ここでの注意点は、執行猶予が付けられた場合は、執行猶予期間が満了すればその翌日から宅建免許を受けることができるということ、控訴中・上告中も宅建免許を受けることができる(=刑が確定していない)ということです。

例題:法人である宅建業者の取締役が覚せい剤取締法違反により懲役刑に処せられたときでも、執行猶予中であれば、当該宅建業者の宅建免許が取り消されることはない。
⇒誤り:懲役刑ですので、下記3番の一定の罰金刑に該当しなくても問答無用で欠格事由に該当します。そして執行猶予期間中(満了してない)ですので、免許欠格者のいる当該宅建業者の宅建免許は取り消されます。


3.一定の罰金刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年、または時効の完成などにより刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

罰金刑で欠格事由に該当する犯罪は、宅建業法違反暴力団員による不当な行為の防止に関する法律違反暴行罪脅迫罪傷害罪背任罪、傷害現場助勢罪、凶器準備集合罪(結集罪)となります。過去に出題されたひっかけパターンとして、過失〇〇罪、詐欺、器物損壊、私文書偽造、道路交通法違反などによる罰金刑はセーフです(もちろんこれらの刑でも禁錮以上であれば欠格事由に該当します)。

例題:宅建業者が宅建業法違反で過料に処せられた場合、当該宅建業者は、その刑の執行を終えた日から5年を経過しなければ宅建免許を受けることができない。
⇒誤り:免許基準に欠格するのは、「禁錮以上の刑」または「宅建業法違反や暴行罪等の罪による罰金刑」に処せられた場合で、過料はセーフです。刑法の知識なので気にする必要もありませんが、過料は刑罰ですらありません。過料は行政罰なのに対し、科料は刑事罰となりますが、どちらも宅建免許の欠格要件とはなりません。


4.免許申請前5年以内に、宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者

無免許営業などを行っていた場合などです。宅建士が宅建業務に関して処分を受けた場合に、当該宅建士の使用者である宅建業者にも責任があり、情状が特に重いときは、宅建業者の免許が取り消されることもあります。


5.宅建業に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者

怖い系のお兄さんなどです。これらに事業を支配されていた場合、その者も宅建免許を受けることができません


6.不正手段による免許取得、業務停止処分に違反するとして免許を取り消され、取消しの日から5年を経過していない者

悪質な事由により宅建免許が取り消された場合だけが対象ですので注意してください。免許換えを怠ったことにより宅建免許を取り消された場合など、悪質とは言えない事由の場合は5年を待たずに宅建免許を受けることができます。

例題:宅建免許を受けてから1年以内に事業を開始せず、または1年以上事業を休止したことを理由に宅建免許を取り消された者は、取消しの日から5年を経過しなければ宅建免許を受けることができない。
⇒誤り:1年以内に事業を開始しない場合や、引き続き1年以上事業を休止した場合は宅建免許の取消事由となりますが、悪質とは言えず5年を待つ必要はありません。


7.上記6番の者が法人の場合、免許取消処分の聴聞の期日、場所の公示日60日以内にその法人の役員であった者で、取消しの日から5年を経過していない者

ここで問われるのは「役員」のひっかけです。役員とは主に「常勤の取締役」「非常勤の取締役」を言いますが、その他、業務執行社員や相談役、大株主など、会社に対して実質的に強い支配力を持った者も含まれます。単に専任の宅建士や政令で定める使用人というだけでは役員に該当しません。聴聞(ちょうもん)とは、処分を受ける者に釈明および証拠提出の機会を与える制度をいいます。

60日以内ですので、もちろん90日前に取締役を退任した者などは該当しません。


8.上記6番に該当するとして免許取消処分の聴聞の公示がなされ、公示の日から処分決定までの間に解散または廃業の届出をし、その届出から5年を経過していない者

免許取消処分を免れるため、わざと解散・廃業するのを防ぐためです。

免許取消処分」の聴聞の公示がなされ、公示の日から処分決定までの間に解散または廃業の届出をし、その届出から5年を経過していない者です。「業務停止処分」について聴聞の公示が云々と出題されても欠格事由となりませんので、6番の業務停止処分のケースとしっかり区別しておいてください。このように、ちょっとした箇所だけ変えてくる意地悪問題も宅建業法では多く出題されますので意識して覚えていきましょう


9.上記8番の期間内に合併により消滅した法人、または解散・廃業の届出をした法人の、聴聞の公示日前60日以内に役員であった者で、その消滅または届出から5年を経過していない者

要は8番が法人の場合で、その法人を実質動かしていた役員がすぐに他で悪さをしないように、ということです。

宅建合格!免許基準

10.営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が上記1~9番のどれかに該当する場合

法定代理人から営業の許可を受けている未成年者を、営業に関して成年者と同一の行為能力を有する未成年者」と呼び、この場合は単独で宅建免許を受けることができます。問題は営業の許可を受けていない未成年者ですが、この場合は、その法定代理人を基準に判断する、というわけです。

未成年者の法定代理人が法人の場合で、その役員の中に欠格要件に該当する者がいるときも、その未成年者は宅建免許を受けることができません。


11.法人で、その役員または政令で定める使用人のうち、上記1~9番のどれかに該当する者がいる場合

ここで鋭い方は、「あれ?7番と矛盾してる。政令で定める使用人はセーフでは?」と思われるでしょう。ここは非常に間違えやすいところです。つまり、不正を犯した政令の使用人を雇っていた法人は宅建免許を受けることができず(11番)、法人が不正を犯したが、その法人の政令で定める使用人に過ぎなかった者は宅建免許を受けることができる(7番)、というわけです。ちなみに政令で定める使用人とは、宅建業者の事務所の代表者をいいます。支店長や営業所長などですね。

尚、役員と同等の支配力を有しているなどの例外がない限り、監査役は役員に該当しません監査役が懲役刑や暴行罪等による罰金刑に処せられ、刑期満了から5年を経過していなくても、その者を監査役とする法人は宅建免許を受けることができます。


12.個人で、政令で定める使用人のうち、上記1~9番のどれかに該当する者がいる場合

法人ではなく個人業者でも、その事務所の代表者が不正を犯してはダメです。


13.決められた数の専任の宅建士を置いていない者

詳しくは後述しますが、宅建業者は事務所ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で、成年である専任の宅建士を置かなければなりません。この決まりを守っていない宅建業者は宅建免許を受けることができません。


14.免許申請書の重要事項に虚偽の記載、または重要な事実の記載が欠けている場合


以上、免許基準を満たさず1~14番に該当する者は宅建免許を受けることができません。これらに該当する場合、免許権者は、免許を与えることができない理由を書いた書面を、宅建業者になろうと申請してきた者に対して通知することになります。欠格事由に該当するのに、免許権者の裁量で免許を与えるなどといったこともできません
  いつから・誰が・どんな状況? いつまで?
心身故障者
破産者 復権を得れば直ちに免許可能
禁固以上の刑 刑の執行が終わった日or
刑の執行を受けることがなくなった日から
5年を経過しない者は不可
一定の罰金刑 刑の執行が終わった日or
刑の執行を受けることがなくなった日から
5年を経過しない者は不可
宅建業に関して 免許申請前5年以内に不正または著しく不当行為をした者
不正または不誠実な行為をするおそれが明かな者
これらに事業を支配されている者も含む
暴力団員等 暴力団員でなくなった日から 5年を経過しない者は不可
免許取消 不正手段による免許取得
業務停止処分事由に該当して情状が特に重い
業務停止処分中に更に違反
取消日から5年を経過しない場合は不可
免許取消(法人) 聴聞公示日前60日以内に役員だった者 取消日から5年を経過しない場合は不可
廃業 取消処分までに相当理由なく廃業等の届出をした者 届出日から5年を経過しない場合は不可
廃業(法人) 聴聞公示日前60日以内に役員だった者 届出日から5年を経過しない場合は不可
未成年者 法定代理人が欠格事由に該当
法定代理人から営業許可を受けていない
婚姻をしていない
宅建業者 役員や政令使用人に欠格事由に該当する者がいる
事務所 定められた数の成年者である専任宅建士が不足している
手続書類 免許申請書や添付書類の重要事項に虚偽または記載漏れ

☆免許権者が「必ず」取り消さなければならない必要的取消事由は6つ!(任意的まとめは前ページ)

免許欠格事由に該当したとき
免許換えを怠ったとき
宅建免許取得後1年以内に事業を開始しない or 1年以上事業休止
不正手段による宅建免許取得(取消日から5年経過しないと再免許不可)
情状が特に重い業務停止処分行為(取消日から5年経過しないと再免許不可)
業務停止処分期間中に更に違反(取消日から5年経過しないと再免許不可)


近年の宅建本試験問題(皆さん直近の過去問は解く機会が多いと思いますので、古すぎず新しすぎない練習問題を1つ。言い回しなど、雰囲気をチェックしておきましょう)

宅建業の免許に関する次の記述のうち、宅建業法の規定によれば、誤っているものはどれか(2015-27

1.A社は、不正の手段により宅建免許を取得したことによる宅建免許の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分がなされるまでの間に、合併により消滅したが、合併に相当の理由がなかった。この場合においては、当該公示の日の50日前にA社の取締役を退任したBは、当該消滅の日から5年を経過しなければ、宅建免許を受けることができない。
2.C社の政令で定める使用人Dは、刑法第234条(威力業務妨害)の罪により、懲役1年、執行猶予2年の刑に処せられた後、C社を退任し、新たにE社の政令で定める使用人に就任した。この場合においてE社が宅建免許を申請しても、Dの執行猶予期間が満了していなければ、E社は宅建免許を受けることができない。
3.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であるFの法定代理人であるGが、刑法第247条(背任)の罪により罰金の刑に処せられていた場合、その刑の執行が終わった日から5年を経過していなければ、Fは宅建免許を受けることができない。
4.H社の取締役Iが、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員に該当することが判明し、宅建業法第66条第1項第3号の規定に該当することにより、H社の宅建免許は取り消された。その後、Iは退任したが、当該取消しの日から5年を経過しなければ、H社は宅建免許を受けることができない。


2番の執行猶予期間中と、3番の営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者の法定代理人が欠格事由という問題は基本ですね。1番と4番を比較していただきたくてこの少し古めの問題をチョイスしました。1番のBは不正を犯した法人の公示60日以内に役員だったです。4番のH社は不正を犯した当人が退任しています。よって、1番のB自身はA社消滅から5年を経過しなければ宅建免許を受けることができず、欠格者Iが居なくなったH社は5年を待たずに宅建免許を受けることができます。よって、正解(誤っているもの)は4番となります。簡単ですね!


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宅建業の定義の完全解説 免許証の効力の完全解説
死刑 重い 免許× 種類を問わず欠格事由に該当
懲役 免許× 種類を問わず欠格事由に該当
禁錮   免許× 種類を問わず欠格事由に該当
罰金   免許△ 宅建業法違反、暴行、傷害、脅迫、背任等で欠格事由
拘留 免許○ 種類を問わず免許可能
科料 軽い 免許○ 種類を問わず免許可能(行政罰の過料も同様)