- 平成30年の宅建士法改正情報
平成30年(2018年)の宅建試験で出題される法改正情報をお送りします。
今年はどこが出題されてもおかしくない重要な改正が揃っていますね。既存規定の変更ではなく新たな追加規定ばかりです。出題可能性高めなので、絶対に押さえておきましょう。尚、だいぶ前から話題となっている「改正民法」につきましては、今年と、更に来年までの宅建試験には影響がなさそうです。
では、今年の宅建試験で出題が予想される改正事項を順番に見ていきます!文末の★は重要度で、最高★5つです。
■権利関係の法改正
特になし
■宅建業法の法改正
1.既存住宅の建物状況調査(インスペクション制度)
既存(中古)住宅について、インスペクション制度が導入されました。インスペクションとは、住宅診断のことです。調査対象となるのは、「建物の構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」の2つです。調査実施者は、「既存住宅状況調査技術者」となります。宅建業者が実施すると出題されたら誤りです。(★★★★★)
また、インスペクション制度の導入により、各種書面への記載事項も追加されています。インスペクションが実施された場合は記載義務がありますが、インスペクション自体は義務ではないという点に注意してください。
35条書面
全契約:1年以内に状況調査を実施しているかどうか、実施している場合は結果の概要。
売買交換:建物の建築および維持保全状況に関する書類で、国土交通省令で定めるものの保存状況。こちらは貸借で記載不要なので注意。
37条書面
売買交換:状況調査について当事者双方が確認した事項。貸借では不要。
媒介契約書
依頼者に対する状況調査実施者のあっせんに関する事項。一般、専任を問いません。
2.テレビ電話など(IT)を用いての重要事項説明
貸借の媒介代理に限り、テレビ会議システムやテレビ電話を用いての重要事項の説明が可能となりました。貸借のみですので注意してください。定期建物賃貸借の事前説明も、宅建業法の重要事項説明と併せてITによる説明が可能となっています。(★★★★★)令和3年法改正により、全取引でITを用いての重要事項説明が可能となりました!
以下、出題ポイントです。
・宅建士および重要事項説明を受けようとする者の双方が、書類や説明内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、音声を十分に聞き取れ、双方向でやり取りできる環境で実施されていること。これらの状況に支障が生じた場合、宅建士は直ちに説明を中断し、当該状況の解消後に説明を再開します。(★★)
・宅建士が記名押印した重要事項説明書および添付書類が、重要事項説明を受けようとする者にあらかじめ送付されていること。重要事項説明を受けようとする者が、重要事項説明書および添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にある必要があります。(★★★★★)
・宅建士は宅建士証を提示し、重要事項説明を受けようとする者が画面上で視認できたことを確認していること。(★★★★)
3.低廉な空家等の売買交換における特例
価額が400万円以下の宅地または建物の売買や交換について媒介または代理を行う場合、売主や交換を行う者から、通常の報酬額の他に現地調査等に特別に要する費用を受領することができるようになりました。400万円以下の物件売買(交換)の報酬上限=報酬と特別費用を併せて18万円+消費税までとなります。必ず押さえておきましょう。(★★★★★)
■宅建業法の法改正例題
【問1】中古店舗売買の媒介依頼を受けた宅建業者は、当該建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項を37条書面に記載しなければならない。
【問2】中古住宅貸借の媒介依頼を受けた宅建業者は、当該建物について2年前に建物状況調査が実施されていた場合、35条書面には、建物状況調査を実施していない旨の記載をすれば足りる。
【問3】宅建業者は、依頼者に対し建物状況調査を実施する者をあっせんした場合において、報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することができる。
【問4】売主から300万円の物件について売買の媒介依頼を受けた宅建業者は、特別な調査費用として最大4万円を受領することができる。
【1…×】建物状況調査(インスペクション)の対象となる既存建物とは、「中古住宅」を指します。店舗、工場、商業ビルなどは含まれません。中古住宅であっても貸借では記載不要という点にも注意してください。
【2…○】1年以内に建物状況調査が実施されているかどうか、実施されている場合はその結果の概要を説明します。実施していない場合は「建物状況調査を実施していない」と記載されます。
【3…×】建物状況調査を実施する者のあっせんは媒介代理業務の一環であるため、報酬と別にあっせん料金を受領することはできません。
【4…○】従来は300万円×4%+2万円=14万円が報酬の上限でしたが、法改正により調査費用を足して18万円(+消費税分=課税事業者なら194,400円)が上限となりました(報酬額上限が18万円であることを媒介契約時に売主が合意している必要があります)。また、上限18万円は売主のみで、買主からは従来の報酬額となります(=売主から18万円、買主から14万円)。(現在は消費税10%で198,000円が上限となります)
■法令上の制限の法改正
「田園住居地域」が追加されて用途地域が13種類となりました。田園住居地域には、建築物の容積率、建蔽率、高さ制限を定め、必要があれば外壁後退距離を定めます。尚、改正により「建ぺい率」が「建蔽率」と漢字表記となりましたので頭の片隅に・・。
以下、田園住居地域に関する規定です。
・容積率:5/10、6/10、8/10、10/10、15/10、20/10から都市計画で定める。(★)
・建蔽率:3/10、4/10、5/10、6/10から都市計画で定める。(★)
・高さ制限:10mまたは12mのいずれかで都市計画で定める。(★★)
・外壁後退距離:1mまたは1.5mを限度として都市計画で定めることができる。(★)
・道路斜線制限、北側斜線制限、日影規制が適用され、日影規制の対象建築物は「軒の高さ7m超」または「地階を除く階数3以上」の建築物となる。(★★★)
・10mまたは12mの高さ制限があるため、隣地斜線制限は適用されない。(★★★)
・農産物の生産、集荷、処理、貯蔵用建築物を建築することができる。(★★)
・農業の生産資材の貯蔵用建築物を建築することができる。(★★)
・地域で生産された農産物の販売用店舗、農業の利便促進に必要な店舗や飲食店を建築することができる。(★★)
・住宅や小中学校など、他は第二種低層住居専用地域と同じ用途制限となります。
・田園住居地域内の農地において、土地形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設等を行おうとする者は、原則として市町村長の許可を得なければならない(例外:通常の管理行為や軽易な行為、非常災害のため必要な応急措置、都市計画事業の施行として行う行為)。また、国や地方公共団体が当該行為を行う場合は許可不要ですが、あらかじめ市町村長に協議しなければなりません。(★★★)
■税その他の法改正
特例措置の適用期限延長と細かい改正ばかりで、特筆すべき点はありません。強いて挙げれば、独立行政法人住宅金融支援機構の業務について一つだけ覚えておいてください。
機構は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律19条の規定による貸付けおよび法律20条1項の規定による保険を行うこと。何を言っているのか分からないと思いますが、「機構の業務」「住宅確保要配慮者」「貸付け」「保険」というキーワードを何となく覚えておいてください。それで十分です。(★★)
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