宅建過去問:「抵当権」の重要過去問を見ていきます。覚えることも難易度が高めの問題も多く、抵当権に割く時間で他の科目に力を入れることも得策と言えますので、特に重要な過去問だけを紹介しておきます。最低限ここで紹介することを覚えておけば消去法で正解できる可能性も高くなります。ズバリ正解肢の可能性も十分にあります。
- 抵当権の宅建過去問
■Aは、BのCに対する金銭債権(利息付き)を担保するため、Aの所有地にBの抵当権を設定し、その登記をしたが、その後その土地をDに売却し、登記も移転した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(1990年の宅建過去問 問-10)
【問】Bが抵当権を実行した場合、A、C及びDは、競買人になることができない。
不動産の第三取得者であるDは自ら競売人となることができます。よって誤りです。
【問】Bは、抵当権の実行により、元本と最後の2年分の利息について、他の債権者に優先して弁済を受けることができる。
抵当権者は、利息について満期となった最後の2年分のみ他の債権者に優先して弁済を受けることができます。よって正しい肢となります。
■抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2013年の宅建過去問 問-5)
【問】抵当権の対象不動産が借地上の建物であった場合、特段の事情がない限り、抵当権の効力は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。
抵当権が実行され競売で建物を手に入れても、敷地を利用できなければ何の意味もありませんね。建物についての抵当権の効力は敷地の賃借権にも及び、正しい肢となります。
【問】対象不動産について第三者が不法に占有している場合、抵当権は、抵当権設定者から抵当権者に対して占有を移転させるものではないので、事情にかかわらず抵当権者が当該占有者に対して妨害排除請求をすることはできない。
不法占拠者が居座ったら物件の価値はどんどん下がっていきます。よって抵当権者は、抵当不動産の所有者が不法占拠者に対して有する妨害排除請求権を代位行使することができ、誤りとなります。法令制限や税その他は「単に知っているか勝負」となりますが、この2問のように、民法は常識的に考えれば正誤が分かる問題も多いですね。
■Aは、BのCに対する債務を担保するため、Aの所有地にCの抵当権を設定し、その旨の登記も完了した後、建物を新築して、Dに対し当該土地建物を譲渡した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1992年の宅建過去問 問-6)
【問】Cは、抵当権を実行して、土地及び建物を共に競売し、建物の売却代金からも優先して弁済を受けることができる。
一括競売で抵当権者が優先弁済を受けられるのは土地の売却代金についてのみです。よって誤りです。
【問】Dは、B及びCの反対の意思表示のないときは、Bの債務を弁済して、抵当権を消滅させることができる。
債権者と債務者に反対の意思がない場合、第三者は債務を弁済して抵当権を消滅させることができます(抵当権はその第三者のために消滅する)。よって正しい肢として出題されましたが、そもそも利害関係を有する抵当不動産の第三取得者は反対の意思表示に関係なく弁済することができます。解釈次第で誤りとも言えるグレーな問題ですが、B及びCの反対とありますので、債権者と債務者の間で「第三者が弁済をすることができない」という特約がなければ第三者が弁済できるという趣旨の問題だったのかもしれません。
■Aは、BからBの所有地を2,000万円で買い受けたが、当該土地には、CのDに対する1,000万円の債権を担保するため、Cの抵当権が設定され、その登記もされていた。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(1990年の宅建過去問 問-6)
【問】Aは、契約の際Cの抵当権のあることを知らなくても、その理由だけでは、AB間の売買契約を解除することはできない。
買主は、抵当権の実行により所有権を失った場合に限り、善意悪意にかかわらず契約を解除することができます。よって正しい肢となります。
【問】Aは、抵当権消滅請求することができ、その手続きが終わるまで、Bに対し、代金の支払いを拒むことができる。
抵当権消滅請求権者は、代金支払拒絶権を有します。よって正しい肢となります。
【問】Cは、BのAに対する代金債権について、差押えをしなくても、他の債権者に優先して、1,000万円の弁済を受けることができる。
物上代位によって他の債権者に優先して弁済を受けるためには、代金債権を払渡し前に差し押さえる必要があります。よって誤りです。
■民法第379条は、「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2009年の宅建過去問 問-6)
【問】抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。
主たる債務者や保証人、そしてこれらの承継人は抵当権消滅請求をすることができません。保証人は第三取得者となる以前に弁済の義務を負っています。よって誤りです。
【問】抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。
もちろん抵当不動産の第三取得者は抵当権消滅請求が可能ですが、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に抵当権消滅請求をする必要があります。よって誤りです。
【問】抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法第383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。
抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対して民法383条の書面を送付する必要があります(裁判所の許可は不要)。よって正しい肢となります。
【問】抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求にかかる民法第383条所定の書面の送付を受けた抵当権者が、同書面の送付を受けた後2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。
債権者が抵当権消滅請求の効力を失わせるためには、通知等ではなく、2ヶ月以内に競売の申立てを行う必要があります。よって誤りです。
■Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(1998年の宅建過去問 問-5)
【問】Aから抵当権付きの土地及び建物を買い取ったGは、Bの抵当権の実行に対しては、自ら競落する以外にそれらの所有権を保持する方法はない。
抵当不動産の第三取得者は、自ら競落人となるほか、第三者弁済、代価弁済、抵当権消滅請求によって土地と建物の所有権を保持できます。よって誤りです。
■AはBから2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。(2010年の宅建過去問 問-5)
【問】AがBとは別にCから500万円を借り入れていた場合、Bとの抵当権設定契約がCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。
抵当権の設定は登記が対抗要件となります。よって正しい肢となります。
【問】当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。
火災保険請求権も物上代位が可能です(土地だけに抵当権を設定して建物が焼失しても火災保険請求権の代位行使はできませんのでひっかけに注意)。よって正しい肢となります。債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合、被担保債権の弁済期が到来している必要がありますが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合も、被担保債権の弁済期が到来していることを要する点に注意。
■Aは、Bから3,000万円の借金をし、その借入金債務を担保するために、A所有の甲地と、乙地と、乙地上の丙建物の上に、いずれも第1順位の普通抵当権(共同抵当)を設定し、その登記を経た。その後甲地については、第三者に対して第2順位の抵当権が設定され、その登記がされたが、第3順位以下の担保権者はいない。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(2001年の宅建過去問 問-7)
【問】甲地が1,500万円、乙地が2,000万円、丙建物が500万円で競売され、同時に代価を配当するとき、Bはその選択により、甲地及び乙地の代金のみから優先的に配当を受けることができる。
各不動産の価額に応じて按分し、抵当権者の選択によって一部の不動産のみから配当を受けることはできません。よって誤りです。
【問】Bと、甲地に関する第2順位の抵当権者は、合意をして、甲地上の抵当権の順位を変更することができるが、この順位の変更は、その登記をしなければ効力が生じない。
抵当権の順位変更は登記をしなければ効力を生じません。よって正しい肢となります。順位変更には利害関係人(転抵当権者など)の承諾が必要で、債務者や抵当権設定者は利害関係人に含まれない点にも注意。
■根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(1989年の宅建過去問 問-5)
【問】根抵当権者は、元本の確定前において、同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、その順位を譲渡することができる。
元本確定前に根抵当権またはその順位の譲渡や放棄をすることができません。元本確定前の根抵当権の処分として許されるのは転抵当のみです(根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権の全部または一部を譲渡することは可能→譲受人は元本確定前の根抵当権を行使すること不可)。よって誤りです。
【問】根抵当権者は、元本の確定前において、後順位の抵当権者の承諾を得ることなく、根抵当権の担保すべき債権の範囲を変更することができる。
元本確定前でも根抵当権の被担保債権の範囲と債務者の変更は可能(利害関係人の承諾不要)です。よって正しい肢となります。確定期日前であれば確定期日の変更も可能(利害関係人の承諾不要)で、確定後であっても極度額の変更は可能(利害関係人の承諾「必要」)です。
■根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2000年の宅建過去問 問-5)
【問】根抵当権は、根抵当権者が債務者に対して有する現在及び将来の債権をすべて担保するという内容で、設定することができる。
根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するものです。被担保債権が将来発生する不特定なものであっても、一定種類の取引に限定されていれば根抵当権を設定することもできますが、「すべて」とする本肢は誤りとなります。
【問】登記された極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額につき、優先弁済を主張できる。
根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額の限度で優先弁済を受けることができます。通常の抵当権のように利息や損害金について最後の2年分に限らず、また2年分以下でも極度額が限界となります。よって誤りです。
■根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2011年の宅建過去問 問-4)
【問】根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがないときは、一定期間が経過した後であっても、担保すべき元本の確定を請求することはできない。
根抵当権設定者は、根抵当権設定から3年を経過すると元本の確定を請求することができ、請求から2週間経過時に元本は確定します(根抵当権者はいつでも確定請求ができ、請求時に確定)。よって誤りです。
【問】根抵当権設定者は、元本の確定後であっても、その根抵当権の極度額を、減額することを請求することはできない。
元本確定後であれば、現に存する債務額+以後2年間に生ずる利息その他の定期金および債務不履行による損害賠償額を加えた額に減額するよう請求することができます。よって誤りです。
■法定地上権に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び判決文によれば、誤っているものはどれか。(2009年の宅建過去問 問-7)
(判決文)土地について1番抵当権が設定された当時、土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより1番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。
【問】土地及びその地上建物の所有者が同一である状態で、土地に1番抵当権が設定され、その実行により土地と地上建物の所有者が異なるに至ったときは、地上建物について法定地上権が成立する。
抵当権設定時に土地および建物の所有者が同一であるため、法定地上権が成立します。よって正しい肢となります。
【問】更地である土地の抵当権者が抵当権設定後に地上建物が建築されることを承認した場合であっても、土地の抵当権設定時に土地と所有者を同じくする地上建物が存在していない以上、地上建物について法定地上権は成立しない。
抵当権者が建物の建築を承認していても、更地に抵当権を設定しているため法定地上権は成立しません。よって正しい肢となります。
【問】土地に1番抵当権が設定された当時、土地と地上建物の所有者が異なっていたとしても、2番抵当権設定時に土地と地上建物の所有者が同一人となれば、土地の抵当権の実行により土地と地上建物の所有者が異なるに至ったときは、地上建物について法定地上権が成立する。
1番抵当権設定当時に土地と建物の所有者が異なるため、2番抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一となっても法定地上権は成立しません。よって誤りです。
【問】土地の所有者が、当該土地の借地人から抵当権が設定されていない地上建物を購入した後、建物の所有権移転登記をする前に土地に抵当権を設定した場合、当該抵当権の実行により土地と地上建物の所有者が異なるに至ったときは、地上建物について法定地上権が成立する。
抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であるため、建物の所有権移転登記がなされていなくても(前所有者名義のままでも)法定地上権が成立します。よって正しい肢となります。
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