借地借家法で押さえる宅建過去問

宅建過去問:「借地借家法」の重要過去問を見ていきます。借地借家法は毎年2問出題されますので、ものすごく重要です。しかし覚えることも多く大変ですので、最低限ここで紹介する知識を押さえておいてください(と言ってもなかなかの量がありますが…)。以下の知識を押さえておけば難しい肢が出題されても消去法で正解できるはずです。2~3肢対応できない場合は全員ヤマ勘レベル正解率30%前後の難問ですので気にしないでください。難問に備えて借地借家法で完璧を目指すなら、その時間で宅建業法を完璧にした方が賢明です。尚、民法の賃貸借で掲載した問題と似た問題も出題していますのでご了承ください。

借地借家法の宅建過去問

AがBからBの所有する建物を賃借している場合に関する次の記述は、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。(1991年の宅建過去問 問-13改題)

【問】Aは、Bの負担すべき必要費を支出したときは、直ちに、Bに対してその償還を請求することができる。

必要費を支出した賃借人は、直ちに賃貸人に償還請求ができます。よって正しい肢となります。

【問】Aは、有益費を支出したときは、賃貸借終了の際、その価格の増加が現存する場合に限り、自らの選択によりその費した金額又は増加額の償還を請求できる。

有益費を支出した賃借人は、賃貸借契約終了時に、賃貸人の選択により、その費した額または現存する増加額の償還請求ができます。よって、Aの選択とする本肢は誤りです。

【問】AはBの同意を得て建物に造作を付加したときは、特約のない限り、賃貸借終了の際、Bに対して時価でその造作を買い取るべきことを請求できる。

賃借人(転借人もOK)は、賃貸人の同意を得て建物に備え付けた造作等について、造作買取請求をしない旨の特約がない限り、賃貸人に時価で買い取るよう請求することができます(普通建物賃貸借でも定期建物賃貸借でも、造作買取請求権を排除する特約は有効)。よって正しい肢となります。


A所有の居住用建物につき、Bが賃料月額10万円、期間を2年として、普通建物賃貸借契約を締結する場合と、定期建物賃貸借契約を締結する場合とにおける次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。(2012年の宅建過去問 問-12改題)

【問】本件普通建物賃貸借契約でも、本件定期建物賃貸借契約でも、賃料の改定についての特約が定められていない場合であって経済事情の変動により賃料が不相当になったときには、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求することができる。

普通と定期を問わず、特約がないのであれば当事者に借賃増減請求が認められます。よって正しい肢となります。普通建物賃貸借の場合に「借賃を減額しない」旨の特約は無効となりますので注意しておいてください(増額しない特約は有効。定期建物賃貸借は不増額も不減額も有効ですが、特約があっても近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときは増減請求が可能)。

【問】本件普通建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付しても当該特約は無効であるのに対し、本件定期建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付さえしておけば当該特約は有効となる。

定期建物賃貸借契約を締結する場合、建物の賃貸人は賃借人に対して、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した「書面を事前に交付して説明」する必要があります。よって誤りです。尚、当該説明書面は相手方(建物賃借人)の承諾を得れば電子交付も可能です。


借地借家法第38条の定期建物賃貸借(以下この問において「定期建物賃貸借」という。)と同法第40条の一時使用目的の建物の賃貸借(以下この問において「一時使用賃貸借」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。(2007年の宅建過去問 問-14)

【問】定期建物賃貸借契約は書面によって契約を締結しなければ有効とはならないが、一時使用賃貸借契約は書面ではなく口頭で契約しても有効となる。

定期建物賃貸借契約は書面による(建物賃借人の承諾を得て電子交付も可)必要があり、一時使用賃貸借と通常の建物賃貸借契約は口頭でも有効です。よって正しい肢となります。

【問】定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。

定期建物賃貸借の契約期間は上限も下限もなく自由で(期間の定めなしは不可)、一時使用賃貸借は最長50年で下限なし(期間の定めなしも可能)通常の建物賃貸借は上限なしで最短1年(期間の定めなしも可能)となります。よって誤りです。

【問】定期建物賃貸借契約は契約期間中は賃借人から中途解約を申し入れることはできないが、一時使用賃貸借契約は契約期間中はいつでも賃借人から中途解約を申し入れることができる。

定期建物賃貸借は、やむを得ない事情により賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは中途解約も可能(床面積200㎡未満の建物に限る)で、一時使用賃貸借と通常の建物賃貸借は期間の定めがなければいつでも解約可能期間の定めがある場合は解約する権利を留保した場合に限り解約可能となります。よって誤りです。

【問】賃借人が賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていないうちに建物が売却されて所有者が変更すると、定期建物賃貸借契約の借主は賃借権を所有者に主張できないが、一時使用賃貸借の借主は賃借権を所有者に主張できる。

定期建物賃貸借と通常の建物賃貸借において新所有者に賃借権を対抗するためには、賃借権の登記または建物の引渡しが必要(建物の引渡しでもよく、賃借権の登記をしない限り賃借権を対抗することができない旨の特約は無効)で、一時使用賃貸借において新所有者に賃借権を対抗するためには、賃借権の登記が必要です。よって誤りです。


AがBに対してA所有の建物を期間を定めないで賃貸した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(1996年の宅建過去問 問-12)

【問】Aは、Bに対して、解約の申入れの日から6月を経過しないと建物の明渡しを請求することができない。

期間の定めのない建物賃貸借において、賃貸人が解約の申入れをした場合、解約申入れの日から6ヵ月を経過することで賃貸借契約は終了します。よって正しい肢となります。また、賃貸人からの解約申入れは正当事由が必要であり、賃借人からの解約申入れに正当事由は必要なく、解約申入れから3ヵ月で終了する点にも注意です。


Aが、Bに対し期間2年と定めて賃貸した建物を、BはCに対し期間を定めずに転貸し、Aはこれを承諾した。この場合、借地借家法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(1998年の宅建過去問 問-12)

【問】AがBに対する更新拒絶の通知をしたときでも、期間満了後Cが建物の使用を継続し、Aがこれに対して遅滞なく異議を述べないと、AB間の契約は更新される。

建物賃貸人が更新拒絶の通知をしていても、賃貸借期間満了後に建物賃借人が建物の使用を継続する場合、建物賃貸人が遅滞なく異議を述べないと、建物賃貸借契約は法定更新され、転貸借にも適用されます。よって正しい肢となります。

【問】AがBに対し更新拒絶の通知をするための正当の事由の有無は、A及びBについての事情によって決せられ、Cについての事情は考慮されない。

正当事由の有無の判断は、転借人の事情も考慮されます。よって誤りです。

【問】AB間の賃貸借が期間の満了によって終了するときも、AがCに対してその旨の通知をした日から6月を経過しないと、建物の転貸借は終了しない。

建物賃貸借契約が期間満了によって終了する場合、賃貸人は、建物の転借人に対して通知をしなければならず、通知から6ヵ月経過後に転貸借は終了します。よって正しい肢となります。


AがBの所有地を賃借して居住用家屋を所有している場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。(1991年の宅建過去問 問-12改題)

【問】Aは、家屋が火災により滅失したときは、新築することができ、その建物が借地権の残存期間を超えて存続するものであるときは、借地権の存続期間は延長される。

借地権の消滅前に建物が滅失しても、借地権は消滅しません。しかし、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続する建物を新築したときは、その建物の築造について借地権設定者の承諾があった場合のみ、借地権は、承諾があった日または建物築造日のいずれか早い日から20年間存続します(滅失から20年というひっかけに注意。土地上の見やすい場所に一定事項を掲示し、建物が滅失した日から2年以内に新たな建物を築造し、その建物の登記をすることで、2年経過後も借地権を第三者に対抗することができます)。借地権設定者の承諾がない本肢は誤りとなります。

【問】Aは、家屋と借地権を他に譲渡しようとするときは、Bの承諾又はこれに代わる裁判所の許可を得なければならない。

賃借権の譲渡には賃貸人の承諾が必要ですが、借地上の建物譲渡に伴い土地賃借権も譲渡する場合には、裁判所の許可をもって賃貸人の承諾に代えることができます。よって正しい肢となります。裁判所の許可を求めることができるのは借地権者のみであり、借地上の建物を譲渡する前に申立てを行うという点に注意です。ちなみに借地上の建物のみを売却することは借地権の譲渡にあたり、借地権設定者の承諾が必要となる点にも注意。

【問】Aは、借地権が消滅した場合において、家屋があるときは、自らが債務不履行のときでも、Bに対し家屋の買取りを請求することができる。

建物買取請求権は、借地権者に債務不履行があって借地契約を解除されたときには行使できません。よって誤りです。一時使用目的の借地権で建物買取請求権が認められない点も覚えておいてください。


Aが、Bの所有地を賃借して木造の家屋を所有し、これに居住している場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。(1997年の宅建過去問 問-11)

【問】増改築禁止の借地条件がある場合に、土地の通常の利用上相当とすべき改築についてBの承諾に代わる許可の裁判をするときでも、裁判所は、借地権の存続期間の延長まですることはできない。

裁判所は、借地条件の変更や財産上の給付命令、その他相当の処分をすることができ、借地条件の変更には存続期間の延長も含まれます。よって誤りです。

【問】Aに対する競売事件でAの家屋を競落したCは、Bが土地の賃借権の譲渡により不利となるおそれがないにもかかわらず譲渡を承諾しないとき、家屋代金支払後借地借家法に定める期間内に限り、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。

第三者による借地権設定者の承諾に代わる裁判所への許可の申立ては、第三者が建物の代金を支払った後2ヵ月以内に限りすることができます。よって正しい肢となります。


AがBから土地を賃借して、建物を建て、その登記をした後、その建物にCの抵当権を設定して、登記をしたが、Aが弁済期に履行しなかったので、Cが抵当権を実行して、Dがその建物を競落した。この場合、民法及び借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1993年の宅建過去問 問-10)

【問】Dは、競落により建物を取得したのであるから、土地の賃借権も当然に取得し、Bに対抗することができる。

賃借権を譲渡するには、原則として賃貸人の承諾が必要であり、建物を競落しても、当然に土地賃借権を対抗することはできません。よって誤りです。

【問】BがDの土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、Dは、Bに対しその建物を時価で買い取るよう請求することができる。

借地権設定者が賃借権の譲渡・転貸に承諾しない場合、建物等を取得した者は、借地上の建物等を時価で買い取るよう請求することができます。よって正しい肢となります。


Aは、建物の所有を目的としてBから土地を賃借し、建物を建築して所有しているが、その土地の借地権については登記をしていない。この場合において、その土地の所有権がBからCに移転され、所有権移転登記がなされたときに関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1996年の宅建過去問 問-13)

【問】Aが、Aの名義ではなく、Aと氏を同じくするAの長男名義で、本件建物につき保存登記をしている場合、Aは、借地権をCに対抗することができる。

借地権者は、借地権の登記がなくても借地上の建物の登記があれば第三者に対抗することができます(実際に住んでいる必要はなし)が、その登記名義は借地権者本人のものでなければありません。よって誤りです。

【問】Aが自己の名義で本件建物につき保存登記をしている場合で、BからCへの土地の所有権の移転が、当該保存登記後の差押えに基づく強制競売によるものであるとき、Aは、借地権をCに対抗することができる。

借地権者は、借地上の建物に自己名義の保存登記があれば第三者に対抗することができ、第三者が強制競売により所有権を取得した場合も同様です。よって正しい肢となります。


平成5年10月AがBのために新たに借地権を設定した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1993年の宅建過去問 問-11)

【問】借地権の存続期間は、契約で25年と定めようと、35年と定めようと、いずれの場合も30年となる。

借地権の存続期間を定める場合、30年未満は30年となりますが、30年以上であれば何年でも構いません。よって誤りです。民法上の賃貸借の存続期間が、改正民法により上限20年→50年となった点にも注意(更新も50年を超えること不可)。

【問】『借地権の設定から30年経過後に、AがBの建物を時価で買い取り、契約は更新しない』と特約しても、その特約は、無効である。

建物譲渡特約付き借地権も有効です(30年以上、書面不要)。よって誤りです。長期定期借地権は50年以上で書面必要(電子交付も可)事業用定期借地権は10年以上50年未満で公正証書必要(建物買取請求不可)ということも比較して必ず押さえておきましょう(書面や公正証書が必要な場合でも、その中身を説明する必要はありません)。


自らが所有している甲土地を有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。(2006年の宅建過去問 問-13)

【問】甲土地につき、Bが居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効である。(改題)

居住用マンションの賃貸事業で事業用定期借地権を設定することはできません。あくまでも「居住用」です(=社宅等も対象外)。事業用定期借地権を設定できない場合、公正証書によらなかった場合なども賃貸借契約自体が当然に無効となるわけではなく通常の賃貸借として扱われますので、「存続期間15年で契約を更新しない」という特約は無効(通常借地権の存続期間は最短30年)となります。よって正しい肢となります。

【問】甲土地につき、小売業を行うというBの計画に対し、借地借家法が定める要件に従えば、甲土地の賃貸借契約締結によっても、又は、甲土地上にAが建物を建築しその建物についてAB間で賃貸借契約を締結することによっても、Aは20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができる。

小売業を行うため事業用定期借地権の設定は可能で、定期建物賃貸借でも「存続期間を20年」(事業用定期借地権は10年以上50年未満、定期建物賃貸借の存続期間は自由)「契約を更新しない」(そもそもどちらも更新なし)という特約は有効です。よって正しい肢となります。

【問】甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。

借地権を第三者に対抗するためには、借地権の登記または借地上の建物の登記が必要です。事業用定期借地権設定契約は公正証書による必要がありますが、対抗要件とは何も関係ありません。よって正しい肢となります。


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