宅建過去問:「債務不履行(+危険負担)」の重要過去問を見ていきます。今回より3回に渡ってお送りする債務不履行、契約の解除、手付で、民法における契約の流れを把握しておいてください。
- 債務不履行の宅建過去問
■Aは、Bに対して金銭債権を有している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1985年の宅建過去問 問-2)
【問】Bの債務の履行について確定期限があるときであっても、Bは、Aから履行の請求を受けるまでは履行遅滞とはならない。
確定期限ある債務の場合、債務者は期限が到来したときから履行遅滞の責任を負います。履行の請求を受けるまでもありません。よって誤りです。
【問】Bが債務を履行しない場合、Aは損害賠償を請求することができるが、その場合、Aは、損害の証明をしなければならない。
特則として債権者は、金銭債権の場合は損害を証明しなくても損害賠償の請求をすることができます(原則は損害の証明が必要)。よって誤りです。
【問】AがBの債務不履行を理由として損害賠償を請求してきた場合、Bは、不可抗力をもって抗弁することはできない。
債権者は、金銭債権の場合は不可抗力を理由に責任を免れることはできません。よって正しい肢となります。
■AはBに建物を売却する契約を締結した。この場合の民法の規定に基づく履行遅滞に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(1987年の宅建過去問 問-6)
【問】Aの父の死亡後3ヶ月後に当該建物を引き渡す旨定めた場合、Aは、Aの父の死亡した日から3ヶ月を経過したことを知った時から遅滞の責任を負う。
不確定期限付債務であるため、死亡後3ヶ月を経過したことを債務者が知ったときまたは期限到来後に履行の請求を受けたときのいずれか早い方から遅滞となります。よって、少しグレーですが正しい肢となります。
【問】当該建物の引渡し期日につき特段の定めをしなかった場合は、Aは、BがAに対し引渡しの請求をした時から遅滞の責任を負う。
期限の定めのない債務であるため、履行(引渡し)の請求を受けたときから遅滞となります。よって正しい肢となります。
■共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について、今年9月1日に売買代金3,000万円(うち、手付金200万円は同年9月1日に、残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2004年の宅建過去問 問-6)
【問】Aが残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても、Bは同年10月31日には2,800万円をAに対して現実に提供しなければ、Bも履行遅滞の責任を負わなければならない。
債権者が代金の受領拒絶を明確にしている場合、弁済の準備をしたことを債権者に通知し、受領してくれと催告すれば債務不履行にはなりません(債務者の履行拒絶意思が明確な場合に無催告解除が認められる改正法と区別)。よって誤りです。ちなみに債権者が履行を拒んだことで履行費用が増加した場合、その増加分は債権者の負担となります。
■A所有の家屋につき、Aを売主、Bを買主とする売買契約が成立した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1989年の宅建過去問 問-9)
【問】家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋が天災によって滅失した場合、Bは、Aに対し代金の支払いを拒むことができない。
引渡しの前の天災による滅失(=売主A・買主Bいずれも帰責事由なし)なので、Bは、代金の支払いを拒むことができます。よって誤りです。
【問】家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋が放火によって半焼した場合、Bは、Aに対し代金の減額を請求することができない。
半焼なので家屋の残りの一部を引き渡し、買主Bは売主Aに対して担保責任(契約解除や減額請求など)を追及する流れとなります。よって誤りです。
【問】家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋がAの失火によって焼失した場合、その契約は失効する。
家屋が焼失しても売買契約が失効するわけではありません。売主Aに帰責事由があるため、買主Bは損害賠償請求をすることができます(履行不能なので契約解除も可)。よって誤りです。
【問】家屋の所有権移転登記が完了し、引渡し期日が過ぎたのに、Aがその引渡しをしないでいたところ、その家屋が類焼によって滅失した場合、Bは、契約を解除することができる。
履行不能なので契約解除が可能です。よって正しい肢となります。(債務者の履行遅滞中に当事者双方に帰責事由なく債務の履行が不能となった場合、債務者に帰責事由があるものとみなされるので、Bは損害賠償請求も可能です)
■両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務の不履行によって生ずる損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2010年の宅建過去問 問-6)
【問】債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。
通常生ずべき損害は、予見可能性に関係なく請求することができます。よって誤りです。
【問】債権者は、特別の事情によって生じた損害のうち、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたものに限り、賠償請求できる。
特別の事情によって生じた損害は、両当事者がその事情を予見「すべき」であった場合に請求することができます(=実際に予見していなくても可能性があったなら請求可能)。よって誤りです。
【問】債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。
履行不能で生じた損害賠償請求権は本来の履行請求権と同一のものと言えるので、履行不能による損害賠償義務の消滅時効も、本来の債務の履行を請求し得るときから進行を開始します。よって正しい肢となります。
【問】債務の不履行に関して債権者に過失があったときでも、債務者から過失相殺する旨の主張がなければ、裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるに当たり、債権者の過失を考慮することはできない。
債務不履行に関する過失相殺は、債務者の主張の有無に関係なく、裁判所が職権ですることができます。よって誤りです。改正民法により、裁判所は損害賠償の予定額を増額することができるようになった点も覚えておいてください。
■債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(2012年の宅建過去問 問-8)
【問】AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
債務不履行とは、契約履行時における不履行を指します。契約準備段階の違反による損害は、不法行為による賠償責任となります。よって正しい肢となります。かなり細かいですが、一読で覚えられますので載せておきます。
【問】AB間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、借主Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年3分の利率により算出する。
金銭給付を目的とする債務不履行について、その損害賠償額は法定利率(改正民法により5%→3%基準の変動利率)によって定めます。よって正しい肢となります。尚、本肢は「利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合」とありますので「利息発生の定めはあるものの、利率を定めなかったケース」として法定利率が適用されますが、「利息がつくかどうか定めなかった場合」は利息が発生しません。細かい見落としに注意してください。
■債務不履行による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(1990年の宅建過去問 問-2)
【問】損害賠償額の予定は、契約と同時にしなければならない。
損害賠償額の予定をする時期に制限はありません。よって誤りです。
【問】損害賠償額の予定は、金銭以外のものをもってすることができる。
損害賠償として金銭以外を充てることも可能です。よって正しい肢となります。
■AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって、AがBに対して、損害賠償請求をする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(2002年の宅建過去問 問-7)
【問】賠償請求を受けたBは、自己の履行遅滞について、帰責事由のないことを主張・立証すれば、免責される。
損害賠償額の予定があるからといって、実際に履行遅滞が発生していないのであれば賠償する必要はありません。帰責事由のないことを主張・立証すれば免責されます。よって正しい肢となります。
【問】Bが、Aの過失を立証して、過失相殺の主張をしたとき、裁判所は損害額の算定にその過失を考慮することができる。
損害賠償額の予定があっても、過失があれば考慮されます。よって正しい肢となります。
【問】Aは、賠償請求に際して、Bの履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り、損害の発生や損害額の主張・立証をする必要はない。
損害賠償額の予定がある場合、債権者は債務不履行があったことを主張・立証すれば足ります(実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても、予定額を超えて請求することはできない点にも注意)。よって正しい肢となります。
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