宅建過去問:「契約の解除」の重要過去問を見ていきます。契約の解除とは、契約の一方当事者の意思表示によって、いったん有効に成立した契約を解消し、その契約を初めからなかったことにすることですね。また、同時に「買戻し」の過去問も見ていきます。買戻しとは、売主が不動産を売却する際に、後日買主から受け取った代金および契約費用を返還して、売買契約解除の特約をすることをいいます。どちらも重要です!
- 解除(手付や買戻し)の宅建過去問
■契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(1985年の宅建過去問 問-4)
【問】解除権は、法律の規定によって発生するものであり、契約当事者間の約定によって発生することはない。
手付金の交付などにより、当事者の契約によって解除原因を創設することも認められています。よって誤りです。
【問】債務の履行が債務者の責めに帰すべき事由によって不能となったときは、債権者は、直ちに契約を解除することができる。
履行不能の場合、無催告で直ちに契約を解除することができます。よって正しい肢です。
【問】解除後の原状回復において、返還すべき金銭があるときは、解除の時点からの利息を付さなければならない。
金銭授受のときからの利息を付さなければなりません(金銭以外の果実も返還)。よって誤りです。
■居住用不動産の売買契約の解除または取消しに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1992年の宅建過去問 問-8)
【問】当該不動産に隠れた瑕疵がある場合、居住の用に支障がなくても、買主は、当該契約を解除することができる。
売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合、瑕疵により契約をした目的が達成することができないとき のみ解除ができます、買主は債務不履行責任を問うことができます(解除も含む。不適合が軽微ならば解除拒絶可能)。居住の用に支障がない=軽微なのか微妙ですが、改正民法により正しい肢としておきます。
【問】買主が支払期日に代金を支払わない場合、売主は、不動産の引渡しについて履行の提供をしなくても、催告をすれば、当該契約を解除することができる。
売買契約の両当事者は同時履行の抗弁権を有するので、売主が債務の履行をしない間は買主も履行遅滞となりません。よって誤りです。
【問】買主のローン不成立のときは契約を解除することができる旨の定めが当該契約にある場合において、ローンが不成立となったときは、売主がその事実を知っていても、買主が解除の意思表示をしない限り、契約は解除されない。
契約を解除するには解除するという意思表示が必要ですが、本肢では誰も解除の意思表示をしていないため、契約が解除されたことにはなりません。よって正しい肢です。
■Aがその所有する土地建物をBに売却する契約をBと締結したが、その後Bが資金計画に支障を来し、Aが履行の提供をしても、Bが残代金の支払いをしないため、Aが契約を解除しようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(1993年の宅建過去問 問-7)
【問】Aは、Bに対し相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBの履行がないときは、その契約を解除し、あわせて損害賠償の請求をすることができる。
契約を解除した場合、相手方は解除とあわせて損害賠償の請求をすることもできます。よって正しい肢となります。
【問】AがBに対して履行を催告した場合において、その催告期間が不相当に短いときでも、催告の時より起算して客観的に相当の期間を経過して、Bの履行がないときは、Aは、改めて催告しなくても、その契約を解除することができる。
催告期間が不相当に短い場合でも、催告の時から客観的に相当の期間を経過して履行がなければ解除権が発生します。よって正しい肢となります。
【問】Aは、Bに対して契約を解除したときは、その後これを撤回することはできない。
解除の意思表示は撤回することができません。よって正しい肢となります。
【問】AがBに対し相当の期間を定めて履行を催告した際、あわせて「催告期間内履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する」との意思表示をし、かつ、その期間内にBの履行がない場合でも、Aがその契約を解除するには、改めて解除の意思表示をする必要がある。
判例は、このような場合の解除の意思表示も有効としています。よって、催告期間内にBが履行をしなければ契約は解除され、Aはあらためて解除の意思表示をする必要はなく、誤りの肢となります。
■Aが、B所有の建物を代金8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った場合で、残金は3ヵ月後所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(1996年の宅建過去問 問-9)
【問】Aは、履行期前でも、Bに残金を提供して建物の所有権移転登記及び引渡しを請求しBがこれに応じない場合、売買契約を解除することができる。
Bの履行期が到来していない以上、Bには「期限の利益」があります。よって誤りです。
【問】Bが、履行期に建物の所有権移転登記はしたが、引渡しをしない場合、特別の合意がない限り、Aは、少なくとも残金の半額2,500万円を支払わなければならない。
引渡しがなければ1円も支払う必要はありません。よって誤りです。
■不動産の売買契約における手付に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1992年の宅建過去問 問-7)
【問】解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。
代金等の弁済期前であれば、契約締結後に交付されても有効です。よって誤りです。
【問】買主が手付を交付した後、契約に基づいて中間金の支払いを済ませた場合でも、契約に別段の定めがなく、売主が履行に着手していなければ、買主は、手付を放棄して、当該契約を解除することができる。
相手方が履行に着手した後は、手付けによって契約解除はできません。逆に自分が履行に着手していても、相手方が着手していなければ解除可能です。よって正しい肢です。
【問】買主が手付を交付した後、売主の責めに帰すべき事由により売主の債務が履行不能となった場合において、損害賠償額について契約に別段の定めがないときは、その額は手付の倍額とされる。
損害賠償額と手付額は無関係です。よって誤りとなります。
■不動産の買戻しに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(1991年の宅建過去問 問-8)
【問】買戻しをするには、買主の支払った代金及び契約費用を返還すればよく、必要費及び有益費を支払わなければ買戻しをなし得ない旨の特約は、無効となる。
買戻しをするには、代金と契約費用を返還すればよく、利息は特約があるときだけ支払います(特約があれば「代金と契約費用」ではなくその金額でも可)。利息以外の金銭(必要費・有益費)は特約があっても支払う必要はありません。よって正しい肢となります。
【問】買戻しの期間は、10年を超えることができない。
買戻し期間は10年を超えることはできず、10年を超える定めは10年に短縮されます。よって正しい肢となります。期間の定めがないときは5年ということも覚えておいてください。
【問】買戻しの期間は、その後に、これを伸長することができない。
買戻し期間を後日伸長することはできません。よって正しい肢です。
【問】買戻しの特約は、売買の登記後においても登記することができ、登記をすれば第三者に対して効力を生ずる。
買戻し特約(特約の登記)は、必ず売買契約と同時にしなければならなりません。よって誤りです。
宅建過去問 権利関係一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< | >>> 次のページ >>> |
---|---|
債務不履行の過去問 | 保証債務の過去問 |