心裡留保・虚偽表示・錯誤の難問対策

宅建試験の解説:冗談で交わした口約束はどうなるのか、勘違いで結んだ契約はどうなるのかなど、特殊な意思表示の効果について見ていきます。心裡留保通謀虚偽表示錯誤から7割程度の確率で出題されます。単体で見るとそれぞれの出題確率は2~3割ですが、とても簡単なので宅建試験における得点源です。当事者間の効力、第三者に主張(=対抗)できるかなど、しっかり押さえておきましょう。

心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤の難問対策

心裡留保(しんりりゅうほ)

心裡留保とは、簡単に言うと冗談・自作自演です。例えば、売る気がないのに「売る」と言ったり、契約書に署名したりすることです。その効果ですが、原則的に冗談では済まされません。契約は有効に成立してしまいます。安全な取引のために、自分の言った言葉には責任を持てということです。しかし例外がありまして、相手方が、

表意者の真意その意思表示が表意者の真意でないことを知っていた場合(=悪意)または、
一般人の注意をもってすれば知り得たはずだと見られる場合(=過失)

は、その意思表示は無効となります。真意を知っていたとは真意でないことを知っていたということで、真意が何かを知っている必要はありません。相手方の悪意・有過失の立証責任は表意者が負います

友人に100万円あげると言われ、それが冗談だったからと言って本気で怒る人はいませんよね。誰がどう見ても冗談だと分かる契約は無効となります。冗談による婚姻や養子縁組など身分上の行為についても、常に無効となります。

また、心裡留保は表意者が意思表示をした時点が判断基準となり、後日に冗談と気づいた場合は無効とはなりません。友人に1万円あげると言われ信じ、後日冗談だと分かった場合は、表意者が頑張って悪意または有過失を立証しなければ1万円を渡すことになります。

相手方が善意無過失 → 効果は有効
相手方が善意有過失 → 効果は無効
相手方が悪意 → 効果は無効

更に改正民法により第三者保護規定が明文化されています。心裡留保による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません。こちらの第三者は善意でさえあればよく、無過失が要求されていない点に注意ですね。

例えばAがBに冗談で自動車を10万円で売る約束をして、Bが何も知らないCに「10万円で車が手に入ることになった」と自慢し、怪しいと思いつつも(=無過失ではない)CがBにその自動車を20万円で買い取る旨の要求をした場合、AはCに対して、Bへの心裡留保による意思表示の無効を主張することができなくなります。


通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)

通謀虚偽表示とは、他の者と一緒に行った真意ではない意思表示です。他人と通謀している点で心裡留保とは異なります。例えば、AさんとBさんが売買契約をしました。Aさんは真意では売るつもりはなく、Bさんも買うつもりはありません。お互いにそのことを知っています。この場合は心裡留保の例外として、相手の真意を知っていたのですから、AB間の売買契約は無効となりますね。

では、何も知らないCさんが、Bさんからその物を買ってしまったらどうなるのでしょうか?AB間の契約は無効ですから、CさんはAさんに物を返す必要があるのでしょうか?いえ、この場合のCさんは民法によって保護されます。Cさんは善意であれば、Aさんに物を返還する必要はありません。Aさんは自業自得です。

ここで注意していただきたいのは、Cさんについて過失の有無を問わないということです。Cさんは、AB間の契約が虚偽表示であることを知らなかったのならば保護されます。注意すればAさんとBさんが何かを企んでいると気付くことができても保護されます。もちろんCさんが悪意の場合は話になりません。Cさんを保護する必要がないのは常識的に見て当然でしょう。

しかし、面白いのはDさんが登場した場合です。Dさんが更にCさんからその物を買ってしまった場合・・

・Cが虚偽表示につき悪意でも、Dが善意ならばDは保護される
・Dが虚偽表示につき悪意でも、Cが善意ならばDは保護される

2つ目は不思議ですね。なぜ悪意のDさんが保護されるのか?これはDさんを保護しなければ、善意のCさんが損害を受けるためです。CD間の契約が解除されたら、DさんはCさんに代金を返還するよう請求するでしょう。損害があれば賠償請求もするかもしれません。このように、善意のCさんを守るために仕方なくDさんを保護するのです。これは覚えておいて損はないかもしれません。


錯誤(さくご)

錯誤とは、思い違い、言い間違いです。もっと簡単に言うと、勘違いです。心理留保や虚偽表示は、表意者自らが真意と食い違った発言をするのに対し、錯誤とは自分で食い違いに気付いていないというパターンです。錯誤とは勘違いですから、表意者は基本的に悪くはありません。よって、表意者保護のために錯誤による意思表示は取消可能となります。しかし、取引の安全も無視できません。では、その調整をどうするか?

錯誤による意思表示が取消事由となるための要件が2つあります。

法律行為の重要な部分に錯誤があること
表意者に重大な過失がないこと

つまり、軽い勘違いや明らかに注意が足りなかった場合は取消事由となりません。ただし、①相手方が錯誤について悪意の場合または重過失により知らなかった場合、②相手方も同じ錯誤に陥っていた場合、表意者は重過失ある錯誤の意思表示でも取り消すことができます

また改正民法により、内心で勘違いして契約してしまった場合(=動機の錯誤)も錯誤に含まれることが明文化されました。「この付近の地価が上がるらしい」という噂を信じて土地を買ったけど、その噂は事実無根だった場合ですね。

1.地価が上がるという噂を信じた(=動機)
2.その土地が欲しくなった(=意思)
3.土地の購入を申し込む(=意思表示)

動機と意思に食い違いがありますが、意思と意思表示に食い違いはありません。契約の相手方は基本的に意思と意思表示だけしか分からず、動機など知ったことではありません。これを動機の錯誤といい、原則として動機の錯誤は、動機が表示されていたときに限り取り消すことができます。1番を相手方に明示したかどうか、ですね。

更に第三者保護規定も新設されています。錯誤による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができません。無過失まで要求されている点に注意です。


意思表示の効力発生時期

意思表示は、その通知が相手方に到達したときから効力を生ずる。
到達主義が、隔地者に限定されなくなりました

相手方が正当理由なく意思表示の到達を妨げた場合、通常到達すべきであったときに到達したものとみなされます。また、表意者が通知を発した後に死亡、意思能力の喪失行為能力の制限を受けたときでも、意思表示の効力は妨げられません。


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