不動産登記法の難問対策

宅建試験の権利関係解説:「不動産登記法」の難問対策。登記の申請から仮登記まで、以下、宅建試験の出題ポイントです。

不動産登記法の難問対策

宅建試験では民法以外の権利関係科目として不動産登記法1問、区分所有法1問、借地借家法2問が出題されますが、不動産登記法は取っておきたい1点、区分所有法は取れたらラッキーな1点(近年は簡単な問題が続き得点源)、借地借家法は最低1点できれば2点で、ここは少なくとも2点、できれば3~4点確保しておきたいところです。

民法が難しくなってきている今、不動産登記法は以前より得点源として力を入れておいて損はない科目と言えます。宅建合格のため、ここで1点をいただいておきましょう!


不動産の所有権取得等は、登記をしなければ第三者に対抗することができない!

そもそも「登記」とは、不動産の所有権取得等についての勝ち負けの基準です。先に不動産を買っても登記をしなければ、後から買って先に登記をした者がその不動産所有権を取得します。これを「対抗問題」といいます。不動産の取得以外にも、抵当権や地上権、地役権を移転・設定した場合などにも、それを第三者に主張するためには登記が必要となります。


登記は、登記官が登記記録を登記簿に記録することで行う!

登記記録とは、一筆の土地または一個の建物ごとに、表題部および権利部に区分して作成される電磁的記録をいいます。表題部とは、不動産の表示に関する登記が記録される部分をいい、表示とは、土地や建物の物理的な概況をいいます。権利部とは、所有権や抵当権等の権利に関する登記が記録される部分をいい、さらに甲区乙区に分けられます。甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利に関する事項を記載し、甲区のない登記簿に乙区のみを登記することはできません。

乙区に記録される所有権以外の権利…担保物権(抵当権、質権、先取特権)、用益物権(地上権、永小作権、地役権)、賃借権、採石権
  表題部 権利部
内容 表示に関する登記
土地 → 所在や地目など
建物 → 所在や構造など
権利に関する登記
甲区 → 所有権に関する事項
乙区 → 所有権以外の権利に関する事項
登記申請義務 あり なし
対抗力 登記をしても第三者に対する対抗力はない 登記をすると第三者に対する対抗力がある


表示に関する登記には、所有者に申請義務がある!

表示に関する登記とは、土地を取得したり建物を建てた場合などに、表題部に記録される登記をいいます。建物を新築したり建物が滅失した場合は、それから1ヶ月以内に、所有者は表示に関する登記を申請しなければなりません。

二筆の土地の表題部所有者または所有権の登記名義人が同じであっても、持分や地目が相互に異なる土地の合筆の登記は申請することができません(地目が宅地と田の合筆…×、所有権の登記がある土地と登記がない土地の合筆…×、所有権の登記名義人が異なる土地の合筆…×)。分筆の登記は、所有権の登記がない不動産の表題部所有者または所有権の登記名義人がすることができます。

土地…土地の所在、地番、地目、地積などの登記がなされる
建物…建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積などの登記がなされる

これらに変更があった場合に1ヶ月以内に変更の登記申請が必要なのであって、表題部所有者の住所に変更があった場合に1ヶ月以内に住所変更登記を要するなどのひっかけ問題に注意してください。登記された土地や建物がそこから動くわけではありません。

不動産登記法上の土地とは私権の客体と成り得るものをいい、地表面が水で覆われていても池沼や溜め池は表題登記をすることができ、海水面に没する土地は干潮時に陸地となっても表題登記が不可となります。建物とは屋根と壁があり土地に定着していて容易に移動ができないものをいいます。また、権利に関する登記については、申請義務がないことと比較しておいてください。
  表示に関する登記 権利に関する登記
登記申請義務 あり なし
郵送・オンライン申請 可能 可能
登記官の職権登記 可能 不可


権利に関する登記が2つ以上ある場合、その権利の順位は、登記の先後による!

建物を新築した場合など、その不動産について最初に行う登記を所有権保存登記といいます。この登記は表題部所有者等が単独で申請するという点にご注意ください。

所有権保存登記を申請できる者
表題部所有者またのその相続人その他の一般承継人
・所有権を有することが確定判決によって確認された者
収用により所有権を取得した者
・区分建物で表題部所有者から所有権を取得した者(敷地権付き区分建物の場合は敷地権登記名義人の承諾必要)

そしてここから所有権移転登記や抵当権設定登記など、様々な登記が行われていくわけですが、それらの権利の優先順位は、原則として登記の先後によって決定します。


仮登記を本登記に改めると、本登記は仮登記の順位によることとなる!

仮登記とは、本登記の順位を保全するために、仮にしておく登記をいいます。つまり、後日仮登記を本登記に改めますと、仮登記のあと本登記の間までにその不動産について登記をした者よりも優先することができるのです。

仮登記から本登記の間にその不動産が第三者に移転されていた場合は、本登記に際してその移転登記を抹消することになりますが、その場合、仮登記権利者(本登記を申請する者)は、利害関係人である第三者の承諾情報を提供して抹消登記を申請します。第三者が承諾をしてくれない場合は、裁判の謄本を添付しても構いません。そして、登記官の職権により第三者の登記は抹消されることとなります。


登記は、原則として申請主義によってなされる!

登記は、当事者の申請または官庁・公署の嘱託によってなされます。不動産が2以上の登記所の管轄区域にまたがる場合、法務省令で定めるところにより、法務大臣または法務局もしくは地方法務局の長が、当該不動産に関する登記の事務を司る登記所を指定します。不動産の表示に関する登記等は登記官の職権による登記が認められます(=当事者の申請がなくても登記可)。

登記を申請する者は、その物権変動の当事者です(共同申請主義)。たとえば売買契約においては、登記によって利益を得る買主を登記権利者、所有権を失うなど不利益を被る売主を登記義務者として、買主と売主が共同で申請します。共同申請主義の例外として、当事者の一方が単独で申請できる次の5つ+最新法改正2つを覚えておいてください。

所有権保存登記
・登記名義人変更登記
相続または法人の合併登記
登記手続を命ずる判決による登記(確認判決でないことに注意!)
・仮登記義務者の承諾情報が提供された仮登記

・買戻し特約に関する登記について、登記権利者は、契約日から10年を経過したときは単独で当該登記の抹消を申請することができるようになりました
・遺贈による所有権移転登記は登記権利者及び登記義務者が共同して行うとされていましたが、相続人に対する遺贈に限り、登記権利者の単独申請が可能となりました

確認判決って何?と気にせず、確認判決は×とだけ覚えてください。

また登記の申請は、必ず電子情報処理組織を使用する方法または申請情報を記載した書面(磁気ディスクでも可)を提出する方法により行う必要があります。更に代理でもお伝えしました通り「本人の死亡」により代理権は消滅しますが、唯一の例外として登記申請の代理は本人の死亡により消滅しない点も押さえておいてください。割とよく出題されます。
原則(共同申請) 契約当事者が共同して申請する
例外(単独申請) 所有権保存登記
登記名義人の氏名等の変更(更生)登記
相続・法人の合併登記
登記手続を命じる確定判決による登記
仮登記義務者の承諾情報が提供された仮登記
収用による所有権移転登記
所有権抹消登記(所有権移転登記がない場合)
信託登記
契約日から10年を経過した買戻し登記の抹消
相続人に対する遺贈による所有権移転登記


登記申請には、一定の情報を提供しなければならない!

先に不動産を買っても登記をしなければ、後から不動産を買い登記をした者が優先するというお話をしました。それほど登記は強力で重要なのです。よって、登記を申請するには信用のために一定の情報を提供する必要があります。

申請情報:不動産を識別する事項や申請人の氏名等(オンラインまたは書面)

登記原因証明情報:権利に関する登記を申請する場合に提供する(同一の登記所の管轄区域内にある2以上の不動産について申請する登記原因・登記目的およびその日付が同一である場合には、1つの申請情報で一括申請ができる

登記識別情報:登記義務者が本人であることを証明するための情報(従前の登記済証が存在する場合は登記済証を提出する)

住所証明書:登記権利者が本人であることを証明するための住民票の写し等

代理権限証書:司法書士に対する委任状

登記識別情報が提供できないときは、登記官は、登記申請があった旨、およびその申請が真実である旨を申し出るよう登記義務者に対し通知する必要があります。これを事前通知制度といいます。資格者代理人等が本人である旨を確認した場合は、事前通知は必要ありません。代理でも少し触れましたが、登記権利者と登記義務者が同一の司法書士に委任することも双方代理禁止の例外として許されます

尚、登記識別情報が通知されるのは「申請者自らが登記名義人となる場合」に限られ、債権者代位権による代位申請の場合に債権者には通知されません。
申請情報 申請人の氏名と住所
登記の目的
不動産の識別に必要な事項など
登記原因証明情報 売買契約書など
権利に関する登記を申請する場合に提供する(表示の登記には不要
登記識別情報 登記権利者と登記義務者が共同して権利に関する登記を申請する場合に、登記名義人が本人であるかどうかを確認するために提供する
一定の登記が完了すると、登記名義人となる申請人(=登記権利者)に対して登記官より通知される
滅失や亡失等の事情があっても再発行はされず登記官による事前通知制度または資格代理人による本人確認制度により本人確認を行う


登記簿は、誰でも見ることができる!

登記官に対して手数料を納付して、登記事項証明書(登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面)または登記事項要約書(登記記録に記録されている事項の概要を記録した書面)の交付を請求することができます。また、登記所に備えられている地図(公図)も、手数料を納付すれば誰でも見ることができるという点も覚えておいてください。


令和6年法改正情報

令和6年の法改正により、出題可能性が低めの規定がいくつか追加されました。余裕があれば軽く押さえておいてください。

1.会社法人等番号等
所有権の登記名義人が法人である場合、「会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの」が登記事項として追加されました。

2.外国に居住する所有権の登記名義人
所有権の登記名義人が国内に住所を有しない場合、「国内における連絡先となる者(不動産業者や司法書士等)の氏名・名称、住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの」が登記事項として追加されました。

3.外国人の登記名義人
外国人を所有権の登記名義人とする登記申請の場合、氏名の表音をアルファベット表記したローマ字氏名を申請情報として提供する必要があります。

4.DV被害者保護
登記官は、登記記録に記録されている者(自然人に限る)の住所が明らかにされることで、人の生命や身体に危害を及ぼし、または心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合、その者から申出があったときは、登記事項証明書等に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項(弁護士事務所や被害者支援団体事務所、法務局等の住所)を記載しなければなりません。


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