未成年者の権利能力で押さえる宅建過去問

宅建過去問:権利関係の重要過去問スタート!当サイトの「分かりやすい民法解説」と並行して進めていきますので、まずは分かりやすい民法解説5つ目「未成年者の権利能力」を中心に「制限行為能力者」について見ていきます(1~4は前提知識)。特に重要な問題出題可能性は低いけど覚えやすい問題少し細かいけどまた出題されそうな問題をピックアップしていきますので、ここで紹介した過去問は確実にマスターしておいてください!

制限行為能力者の宅建過去問

未成年者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2013年の宅建過去問 問-2)

【問】父母とまだ意思疎通することができない乳児は、不動産を所有することができない。

法的権利の主体となるためには権利能力(出生時に取得)があれば足りますので、乳児であっても不動産を所有することができます(不動産の売却等を行うには行為能力が必要となります)。よって誤りとなります。


A所有の不動産につき、Aを売主、Bを買主とする売買契約が締結されたが、Aは未成年者であり、未成年後見人であるCの同意を事前に得ていなかった。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1985年の宅建過去問 問-9)

【問】Aが「自分は成年者である。」と偽ってBとの契約を締結した場合には、Aはこれを取り消すことはできない。

制限行為能力者が、自分は能力者であると相手方をだまして契約した場合は、制限行為能力者はその契約を取り消すことができなくなります。よって正しい肢となります。

【問】Aの行為は無効であるが、その後Bから当該不動産を買い受けたDがAの制限行為能力を知らなかった場合は、A及びCは、Dに対し、Aの行為が無効であることを対抗できない。

未成年者が未成年後見人の同意を得ずに契約をした場合、その契約は無効ではなく、取り消し得るものとなります。そしてこの取消しは第三者にも対抗できるため、本肢は誤りとなります。

【問】Bは、Cに対し、1ヶ月以上の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができ、当該期間内にCが確答を発しなかった場合には、CはAの行為を取り消したものとみなされる。

未成年者と取引をした相手方は、未成年後見人に対して1ヶ月以上の期間内に追認するか否かを確答するよう催告することができます。そしてその期間内に確答がなかった場合、未成年後見人は未成年者の行為を追認したものとみなされます。よって誤りとなります。

【問】AB間の契約締結後、A又はCによる取り消しの意思表示がないまま、Aが成年に達した場合は、この契約は、初めから有効であったものとみなされる。

取消権は、追認することができる状態になったときから5年、または契約締結時から20年を経過すると消滅します。よってAが成年に達したとしても、そのことにより直ちに取り消し得た行為が有効となるわけではなく、本肢は誤りとなります(17才で契約→23才まで取消し可)。


A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(1989年の宅建過去問 問-3)

【問】Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったのでその売買契約を取り消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができない。

民法では、善意の第三者の保護よりも、制限行為能力者の保護の方が重要と考えられています。よって未成年者Aは善意の第三者Cに対抗することができ、本肢は誤りとなります。


制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2010年の宅建過去問 問-1)

【問】土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。(改題)

未成年者でも、「単に権利を得、または義務を免れる法律行為」「法定代理人が処分を許した財産の処分(お小遣いなど)」「法定代理人から許可された営業行為(その特定の営業行為のみ)」については、法定代理人の同意なしで有効に行うことができます。しかし、土地を売却するということは土地の所有権を失うということですので、単に義務を免れる行為には該当しません。よって誤りです。尚、この3つの例外は未成年者に関する規定で、成年後見人の同意を得れば成年被後見人が単に権利を得、または義務を免れる法律行為を行うことができると出題されたら誤りとなりますので、ひっかけ問題に注意してください。


A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(1990年の宅建過去問 問-4)

【問】Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。

成年被後見人が行った法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、その行為時点で意思能力を有している場合でも取り消すことができます。そして上述の通り、行為能力の制限による取消しには第三者保護規定が存在しませんので、Cに対しても取消しの効力を主張することができます。よって正しい肢となります。


意思無能力者又は制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2003年の宅建過去問 問-1)

【問】意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。

意思能力を欠いている者が行った意思表示は無効となります。取り消すまでもなく当初から無効で、よって誤りとなります。

【問】成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。

成年後見人に同意権はありません。成年後見人の同意を得ていても、成年被後見人が行った意思表示は取り消すことができます。よって正しい肢となります。

【問】被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。

被保佐人は原則として単独で法律行為を行うことができますが、「不動産に関する権利の得喪を目的とする行為」「相続の承認放棄や遺産分割」「贈与の拒絶や遺贈の放棄」「長期賃貸借」などは保佐人の同意が必要となります。そして土地の売却は「不動産に関する権利の得喪を目的とする行為」に該当するため保佐人の同意を得なければなりませんが、本肢は保佐人の同意を得て行われていますので有効な意思表示となり、取り消すことができない意思表示となります。よって誤りとなります。


後見人制度に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2014年の宅建過去問 問-9)

【問】成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。

取消権を有するのは、制限行為能力者と代理人です。成年後見人は成年被後見人の法定代理人なので取り消すことができ、誤りとなります。

【問】成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する場合には、家庭裁判所の許可を要しない。

成年後見人が、成年被後見人に代わって居住用不動産を処分(売却、賃貸、抵当権設定など)するには、家庭裁判所の許可が必要です。よって誤りとなります。

【問】未成年後見人は、自ら後見する未成年者について、後見開始の審判を請求することはできない。

未成年者の法定代理人は原則として親権者ですが、親権を行う者がいなくなった場合の法定代理人は未成年後見人となります。未成年後見人は最後に親権を行う者が遺言で指定し、この指定がない場合、未成年被後見人またはその親族その他の利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任します。よって未成年後見人も後見開始の審判を請求することができ、誤りとなります。

【問】成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。

成年後見人は後見開始の審判により必ず家庭裁判所が職権で選任しますが、上記解説の通り、未成年後見人は最後に親権を行う者が遺言で指定するのが原則です。よって正しい肢となります。


行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2008年の宅建過去問 問-1)

【問】精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。

本人、配偶者、4親等内の親族などから補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所は補助開始の審判をすることができますが、本人以外の者の請求による場合は本人の同意が必要です。成年被後見人や被保佐人の審判について本人の同意は不要ですので区別しておいてください。よって誤りとなります。


【編集後記】(発行時のメールマガジンより)-------------

宅建の過去問って意外と難しいですよね。最初のうちはなかなか頭に入ってこなくて悩む方も多いと思います(当たり前のことなのですが)。基本書に書いてあることを覚えたはずなのに、遠回しに聞いてくる過去問に対応できず「見たことがない問題ばかり」と感じてしまうかもしれません。二度と出題されないような難問も混ざっていますので、それで難しいと錯覚してしまうこともあるでしょう。しかし、こうやって一問一答式ですぐに答えを見たらすごく簡単に感じませんか?

この「簡単というイメージ」「苦にならない勉強」が大切です。

ドーンと1ページに渡り問題4肢を同時に考えて細かい解説を読むよりも、答えをインプットするつもりで「読み」、ある程度の知識がついてから実戦形式を試した方が断然効果的です。過去問の素早いインプットは出題傾向を掴むアウトプットも同時にこなすことができます。繰り返し読んで「簡単」にマスターしていただければと思います!


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