相続や遺言で押さえる宅建過去問

宅建過去問:「相続」「遺言」の重要過去問を見ていきます。相続分や相続の放棄、遺留分など、ほぼ毎年何かしら出題されます。簡単ですので、どこから出題されてもいいように満遍なく把握しておきましょう。権利関係の貴重な得点源です。

相続や遺言の宅建過去問

Xは、9,000万円の遺産を残して死亡した。Xには、配偶者YとYとの間の子Aがある。XとYとの間には、Aのほかに子Bもいたが、BはX死亡の前に既に死亡しており、その子 b が残されている。さらに、Xには、非嫡出子Cもいる。また、Aには子 a がおり、AはX死亡後直ちに相続を放棄した。この場合の民法の規定に基づく法定相続人に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(1989年の宅建過去問 問-11)

【問】Yが6,000万円、Cが3,000万円の相続分を取得する。

配偶者の相続分は2分の1であり、4,500万円となります。よって誤りです。

【問】Yが4,500万円、b が4,500万円の相続分を取得する。

非嫡出子も相続人となります。よって誤りです。

【問】Yが4,500万円、b が2,250万円、Cが2,250万円の相続分を取得する。

その通り、正解です。

【問】Yが4,500万円、a が1,800万円、b が1,800万円、Cが900万円の相続分を取得する。

BはXの死亡前に既に死亡しており、Bの子bは代襲相続によりXの相続人となります。一方、Aの子aについては、Aが相続放棄をしているため代襲相続は起こりません。よってaをあげている本肢は誤りとなります。


居住用建物を所有するAが死亡した場合の相続に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(1996年の宅建過去問 問-10)

【問】Aに、配偶者B、Bとの婚姻前に縁組した養子C、Bとの間の実子D (Aの死亡より前に死亡)、Dの実子E及びFがいる場合、BとCとEとFが相続人となり、EとFの法定相続分はいずれも8分の1となる。

配偶者および子の相続分は2分の1、よってCDの相続分は各4分の1となり、EFの相続分は、Dが本来相続すべきだった4分の1を均等に分けて8分の1ずつとなります。よって正しい肢となります。この問題とは直接関係ありませんが、親権者が複数の子を代理して遺産分割協議を行うことは利益相反行為となり、追認がない限り無効となる点も覚えておいてください。

【問】Aに、配偶者B、母G、兄Hがいる場合、Hは相続人とならず、BとGが相続人となり、Gの法定相続分は4分の1となる。

この場合、相続人は配偶者Bと直系尊属のGであり、前半は正解。しかし、直系尊属の相続分は3分の1であるため、誤りの肢となります。

【問】Aに法律上の相続人がない場合で、10年以上Aと同居して生計を同じくし、Aの療養看護に努めた内縁の妻Iがいるとき、Iは、承継の意思表示をすれば当該建物を取得する。

特別縁故者への財産分与には一定の手続きが必要であり、意思表示のみで承継されることはありません。よって誤りです。

【問】Aに、その死亡前1年以内に離婚した元配偶者Jと、Jとの間の未成年の実子Kがいる場合、JとKが相続人となり、JとKの法定相続分はいずれも2分の1となる。

Aの死亡前に離婚しているJは配偶者にあたりません。よってJは相続人とならず、誤りの肢となります(Kが全額相続します)。


Aが死亡し、相続人として、妻Bと嫡出子C・D・Eがいる。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。(1990年の宅建過去問 問-11)

【問】Cが相続を放棄した場合、DとEの相続分は増えるが、Bの相続分については変わらない。

B2分の1、CDE各6分の1だったはずが、Cの相続放棄によって、B2分の1、DE各4分の1となるので、正しい肢となります。

【問】Aが遺産をCに遺贈していた場合、その遺贈は、B、D及びEの遺留分を侵害した部分について、効力を生じない。

遺留分を侵害した部分については当然に無効となるわけではなく、遺留分を保全するために必要な限度で侵害額請求をすることになります。よって誤りです。

【問】Eの遺留分は、被相続人Aの財産の12分の1の額である。

遺留分は相続財産遺留分算定の財産価額の2分の1となるため、Eの本来の相続分6分の1、これに更に2分の1を乗じて12分の1となります。よって(少し微妙ですが)正しい肢となります。

【問】Aの生前、Dが遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けていた場合においても、Dは、相続人となることができる。

遺留分の放棄は、相続人の相続分には影響を与えません。よって正しい肢となります。


相続人が、被相続人の妻Aと子Bのみである場合 (被相続人の遺言はないものとする。) の相続の承認又は放棄に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(1998年の宅建過去問 問-10)

【問】相続の承認又は放棄をすべき3ヵ月の期間の始期は、AとBとで異なることがある。

相続人が相続の承認または放棄ができるのは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内です。よって異なることもあり正しい肢となります。

【問】Aが単純承認をすると、Bは、限定承認をすることができない。

相続人が数人ある場合、限定承認は共同相続人の全員が共同してのみすることができます。よって正しい肢となります。

【問】Aは、Bの詐欺によって相続の放棄をしたとき、Bに対して取消しの意思表示をして、遺産の分割を請求することができる。

詐欺等によって相続を放棄した場合、この取消しは家庭裁判所に対する申述をもって行わなければなりません(相続回復請求権は、相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事実を知ったときから5年間行使しないと時効消滅)。よって誤りです。


相続の承認及び放棄に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(2002年の宅建過去問 問-12)

【問】相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月(家庭裁判所が期間の伸長をした場合は当該期間)以内に、限定承認又は放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなされる。

相続財産の全部または一部を処分相続開始を知った時から3ヶ月以内に限定承認または放棄をしない相続財産を隠匿または消費した場合は単純承認をしたものとみなされます。よって正しい肢となります。共有者の一人が共有物の不法占拠者に対して明渡請求するなどの「保存行為」は単純承認とみなされず自己のために相続の開始があったことを知らなければ相続開始から3ヶ月が経過しても単純承認とはみなされず限定承認をした後でも相続財産を隠せば単純承認とみなされますので注意してください。尚、単純承認があった場合は存在を知らなかった債権債務も承継します。


相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(1999年の宅建過去問 問-3)

【問】相続開始の時において相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。

相続人が数人ある場合、特に指定がないときの相続財産は共有とされます(=遺産分割前でも預貯金債権以外の可分債権について共同相続人は自己の共有持分を自由に処分可能ですが、預貯金債権は相続開始と同時に当然に分割されず、共同相続人が単独で預貯金債権を行使することはできません)。よって正しい肢となります。

【問】被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。

被相続人は遺言で遺産分割の方法を定めることができ、相続開始時から5年を超えない範囲で遺産の分割を禁ずることもできます。よって正しい肢となります。

【問】遺産の分割について共同相続人間に協議が整わないとき、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の地方裁判所に請求することができる。

協議が整わない場合、各共同相続人はその分割を相続開始地の家庭裁判所に請求することができます(いったん成立した遺産分割協議でも、共同相続人全員の合意によりそれを解除することも可能)。地方裁判所ではなく、誤りとなります。

【問】相続開始の時から3年以上経過した後に遺産の分割をしたときでも、その効力は、第三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生ずる。

遺産分割は第三者の権利を害しない範囲で相続開始時にさかのぼって効力を生じます。3年は関係ありません。よって正しい肢となります。


遺言に関する次のそれぞれの記述は、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(1992年の宅建過去問 問-13)

【問】遺言は、満15歳に達すればすることができ、法定代理人の同意は必要でない。

遺言は満15歳で可能、法定代理人の同意もいりません。よって正しい肢となります。

【問】遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても、被相続人の兄弟姉妹は、遺留分の保全に必要な限度で、遺贈の減殺を請求することができる。

遺留分侵害額請求ができるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。よって誤りです。

【問】遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても、遺言者が死亡する前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じない。

遺贈は、遺言者の死亡以前に受贈者が死亡したときは効力を生じません。よって正しい肢となります。


遺言に関する次の記述うち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(2010年の宅建過去問 問-10)

【問】自筆証書遺言は、その内容をワープロ等で印字していても、日付と氏名を自書し、押印すれば、有効な遺言となる。

自筆証書遺言は、全文+日付と氏名を手書きで、そしてこれに押印する必要があります。よって誤りです。近年の法改正で、自筆証書遺言に添付する財産目録の作成にはワープロ等を使用することができるようになった点にも注意しておいてください(各ページに署名捺印の必要あり)。ちなみに遺言内容を変更する場合はちょっと複雑で、遺言者が変更場所を指示し、変更した旨を付記し、これに署名し、その変更場所に押印します。ここまで細かく出題される可能性は低いので、「修正箇所に二重線を引いて押印すれば有効=誤り」と軽く覚えておいてください。

【問】疾病によって死亡の危急に迫った者が遺言をする場合、代理人が2名以上の証人と一緒に公証人役場に行けば、公正証書遺言を有効に作成することができる。

死亡の危急に迫った者が遺言をする場合、証人3名以上の立会いで遺言の趣旨を口授するという遺言方法も有効ですが、2名ではなく公正証書遺言でもありません。よって誤りです。

【問】夫婦又は血縁関係がある者は、同一の証書で有効に遺言をすることができる。

例外なく、遺言は2人以上の者が同一証書ですることができません。よって誤りです。


遺言に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(1994年の宅建過去問 問-13)

【問】遺言に停止条件が付けられた場合、その条件が遺言者の死亡後成就しても、遺言の効力は生じない。

遺言に停止条件が付けられた場合、遺言は条件が成就したときから効力を生じます。よって誤りです。

【問】遺言は、家庭裁判所の検認の手続きを経なければ、効力を生じない。

遺言書の検認は必要ですが、これは遺言書の保存を確実にし、現状を確認するためのものであって、効力を判定するためのものではありません(2020年7月10日以降、法務局に自筆証書遺言の保管を依頼する場合は検認不要)。よって誤りです。

【問】Aが公正証書で土地をBに遺贈すると遺言した場合でも、後に自筆証書でこれをCに遺贈すると遺言したときは、Bは、Aが死亡しても、当該土地の所有権を取得しない。

前の遺言と後の遺言が抵触する場合、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなされます。これは前の遺言と後の遺言の方式が異なる場合でも同様です。よって正しい肢となります。尚、遺言者が自筆証書の内容を一部変更する場合、変更した旨を付記して署名、変更箇所に押印します(自筆証書遺言には遺言者の押印が必要ですが、この押印は自署名下等でなくても、自筆証書を入れた封筒の封じ目に押印すれば有効となります)。


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