分かりやすい請負の無料解説

宅建試験の民法解説:「請負」とは、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます。より詳しい解説はこちら→請負の難問対策

請負の宅建解説

請負とは、まず、契約書の作成は必要ない諾成契約であるという事を覚えておいてください。口頭の約束だけで成立します。

では、宅建試験で出題されそうなポイントを順番に見ていきましょう。


請負人の権利義務

・請負人の責任により、仕事に着手するべき時期に着手しないとき、および途中で仕事を中止したとき → 注文者は請負契約を解除できる

・請負人はその仕事を、他の者にやらせることができる(下請負人の故意過失について、請負人は責任を負う)

・請負人が材料の全部または主要部分を提供 → 完成した目的物はいったん請負人のものとなる(引渡しによって注文者のものとなる)

・注文者が材料の全部または主要部分を提供 → 目的物ははじめから注文者のものとなる

・報酬支払い時期は原則として後払いとする

報酬支払いと目的物引渡しは、同時履行の関係に立つ

・報酬支払いと仕事の完成は、同時履行の関係に立たない(請負人「先にお金くれないと家建てないよ」← 不可。仕事の完成が先

宅建合格!請負
請負人の瑕疵担保責任の制限

目的物に欠陥があった場合、請負人は下記の責任を負います。改正民法によって「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」となり、債務不履行の規定(履行追完請求・報酬減額請求・損害賠償請求・契約解除)が適用されることから、請負特有だった規定が多く削除されています。これら権利の原則は「債務不履行」「売主の担保責任」をご覧ください。

瑕疵修補請求権履行追完請求権
原則:あり
例外:欠陥が重要なものでなくかつ、その欠陥を直すのに多額の費用を要する場合は修補する必要なし

報酬減額請求権

損害賠償請求権
原則:瑕疵修補請求権とともに、またはこれに代えて行使できる

解除権
原則:欠陥のため契約の目的が達成できないときは解除できる
例外:建物その他土地の工作物(水道管敷設等)については解除できない
債務不履行の規定に基づき、建物や土地工作物でも解除可能に

責任追及可能期間
原則:目的物の引渡し(引渡し不要の場合は仕事終了時)から1年(特約で10年可)
例外:建物その他土地の工作物の欠陥の場合は5年
石造、土造、レンガ造、金属造など、頑丈な工作物の場合は10年
建物その他土地の工作物が、欠陥により滅失・毀損したときは、滅失・毀損から1年
※新築工事の特例:請負人は、注文者に当該住宅を引き渡してから10年間責任を負う(特約により20年まで伸長可)
注文者が不適合を知ったときから1年以内に請負人に通知することで債務不履行責任を追及できる請負人が引渡し時に不適合を知りながら告げなかった場合は1年の期間制限なし

免責
あらかじめ注文者との間で、担保責任を負わない旨の特約を結んでいた場合 ←有効
・注文者の提供した材料または指図によって欠陥が生じた場合(請負人が、材料または指図の不適当なことを知って告げなかった場合は責任あり)


請負の終了

・注文者は、仕事の完成前であれば、請負人の受ける損害を賠償して、いつでも一方的に契約を解除することができる(解除は仕事完成前に限られ、引渡し前でも完成後は解除できない)

・目的物が可分であるときは、未完成部分についてだけ解除することができる

・請負人からは解除することはできない(注文者の破産などの例外あり)


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時効 委任
【宅建試験問題 平成6年ー問8】Aが建設業者Bに請け負わせて木造住宅を建築した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.Aの報酬支払義務とBの住宅引渡義務は、同時履行の関係に立つ。
2.Aは、住宅の引渡しを受けた場合において、その住宅に瑕疵があり、契約をした目的を達成することができないときは、引渡しを受けた後1年内であれば、その契約を解除することができる。
3.Bは、引き渡した住宅に瑕疵があるときは、原則として引渡し後5年間瑕疵担保責任を負うが、この期間は、AB間の特約で10年にまで伸ばすことができる。
4.Bは、瑕疵担保責任を負わないとする特約をAと結ぶこともできるが、その場合でも、Bが瑕疵の存在を知っていて、Aに告げなかったときは、免責されない。
1 正:注文者の報酬支払義務と請負人の目的物引渡義務は、同時履行の関係に立つ
2 誤:請負の仕事の目的物が、建物のような土地の工作物のときは、契約解除ができない 改正民法により解除可能になりました
3 正:建物のような土地工作物に瑕疵があるときは、請負人は目的物の引渡しから5年間瑕疵担保責任を負うが、この期間は特約により10年まで伸ばすことができる 改正民法によりこの規定は削除されました
4 正:請負人が瑕疵担保責任を負わない旨の特約も有効だが、特約があっても、請負人が不適合の存在を知って告げなかったときは責任を免れることはできない(改正民法により、責任追及期間の制限がなくなるに過ぎなくなりました)
【宅建試験問題 平成7年ー問10】請負契約により注文者Aが請負人Bに建物(木造一戸建て)を建築させた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、担保責任に関する特約はないものとする。

1.建物の完成後その引渡しを受けたAは、引渡しの時から2年以内に限り、その建物の瑕疵について、修補又は損害賠償の請求をすることができる。
2.Bが建物の材料の主要部分を自ら提供した場合は、Aが請負代金の全額を建物の完成前に支払ったときでも、特別の事情のない限り、Bは、自己の名義で所有権の保存登記をすることができる。
3.AがBから完成した建物の引渡しを受けた後、Cに対して建物を譲渡したときは、Cは、その建物の瑕疵について、Bに対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。
4.Aは、Bが建物の建築を完了していない間にBに代えてDに請け負わせ当該建物を完成させることとする場合、損害を賠償してBとの請負契約を解除することができる。
1 誤:請負人が担保責任を負う期間は、原則として引渡しから1年以内で、例外でも5年や10年
2 誤:注文者が請負代金全額を支払ったのであれば、完成と同時に建物所有権は注文者に帰属する
3 誤:請負人の担保責任とは注文者に対するものであり、注文者から建物を譲り受けた者は請負人の担保責任を追及することができない
4 正:請負人が仕事を完成しない間は、注文者は損害を賠償していつでも請負契約を解除することができる(その後に新たな請負人を見つけるのは自由)