借地権と借家権の難問対策

宅建試験の権利関係解説:「借地借家法」について少し掘り下げてお話します。借家権借地権で丸々2問出題されますので、最低1点、できれば2点をここで確保しておきましょう。さすがに丸々2問出題されるだけあってボリュームもありますが、決して難しくはありません。深入りは禁物でコツコツと覚えていってください。

借地借家法の難問対策

借地借家法とは

借地借家法とは、建物と土地について定めた特別な賃貸借契約の規定です。賃貸人に比べ立場も弱く、経済的にも不利である借家人や借地人を保護するために、民法の規定を修正または補う法律が借地借家法です。

借地借家法で保護される「借家」とは、建物賃貸借に適用されます。一時使用や、無料で建物を借りる場合には、借地借家法は適用されません。借地借家法で保護される「借地」とは、土地を借りて建物を建て、そこで生活する場合に適用されます。建物所有を目的とする地上権、土地の賃借権も借地権として適用されます

借地権を持つ(土地を借りた)者を「借地権者」といい、
借地権を設定した(土地を貸した)者を「借地権設定者」といいます。
建物の場合は、通常通り、「賃貸人」「賃借人」です。


借家権

1.建物賃貸借の存続期間については、存続期間を定める場合と、期間の定めのない場合がある。

存続期間を定める場合、最短期間・最長期間について制限はありません。ただし、期間を1年未満とした場合は、期間の定めがないものとなります。

2.期間の定めがある建物賃貸借をする場合、公正証書等の書面によって契約をすれば、その存続期間を1年未満とすることもできる。

契約の更新をしない旨の特約を定めることもできます。賃貸人は賃借人に対して書面を交付し、賃貸借契約は更新されず期間の満了により終了する旨をあらかじめ説明しなければなりません。2018年法改正により、テレビ電話等による重要事項の説明時に、この定期建物賃貸借の説明もできるようになった点、2022年法改正により、建物賃借人の承諾を得て電子交付も可能となった点に注意してください。

3.建物賃貸借に存続期間の定めがある場合、賃貸人または賃借人のどちらかが、期間満了の1年前から6ヶ月前までに、相手方に対して更新拒絶の通知をしなければ、その借家契約は、前の借家契約と同じ条件で更新したものとみなされる。

賃貸人から更新拒絶の通知をする場合は、正当事由が必要です。正当事由ある更新拒絶の通知がなされたにも関わらず、賃借人が期間満了後もそのまま建物の使用を継続している場合、賃貸人は遅滞なく異議を述べなければ、借家権は更新されてしまいます。この意義に正当事由は必要ありません

4.建物賃貸借に存続期間の定めがない場合、賃貸人または賃借人は、いつでも解約の申入れができ賃貸人からの解約申入れの場合は6ヶ月後賃借人からの解約申入れの場合は3ヶ月後に、それぞれ賃貸借契約は終了する。

賃貸人から解約を申し入れる場合は、正当事由が必要です。正当事由ある解約申入れがなされ6ヶ月が経過したにも関わらず、賃借人がそのまま建物の使用を継続している場合、賃貸人は遅滞なく異議を述べなければ、借家権は更新されてしまいます。この意義に正当事由は必要ありません
  賃貸人からの申入れ 賃借人からの申入れ
正当事由 必要 不要
終了日 6ヶ月経過後 3ヶ月経過後


5.賃借人は、賃貸人の同意を得て付加した造作物(畳やふすまなど建物から分離できるもの)を、賃貸借契約終了時に、賃貸人に対して時価で買い取るよう請求することができる(造作買取請求権)。

造作買取請求権を認めない旨の特約も有効です。造作買取請求権の行使による建物明渡義務と代金支払義務は同時履行の関係に立ちません(建物の明渡しが先)

6.民法の賃貸借契約と同様、賃貸人の承諾を得れば、借家を転貸したり、借家権を譲渡することができる。賃貸人に無断で転貸・譲渡した場合は、原則として、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる。

賃貸人と賃借人の賃貸借契約が終了した場合、転貸借契約も終了します。
以下、例外です。

賃貸借契約が「期間満了」または「解約申入れ」により終了した場合は、賃貸人が転借人に対してそのことを通知しないと、賃貸人は、賃貸借契約の終了を転借人に対抗することができません。賃貸借契約が「賃借人の債務不履行」を理由に解除された場合は、賃貸借契約の終了とともに転貸借契約も当然に終了し、賃貸人はその効果を転借人に対抗することができます。また、賃貸借契約が「合意解除」により終了した場合は、賃貸人はその効果を転借人に対抗することができません
期間満了 賃貸人による終了通知が必要
解約申入れ 賃貸人による終了通知が必要
債務不履行解除 転貸借も終了
合意解除 転貸借は終了しない


7.租税価格の増減や地価高騰などにより、現在の借賃が不相当となった場合、当事者(賃貸人または賃借人)は、借賃の増額・減額を請求することができる。

増額をしない特約がある場合、その特約期間内の増額請求は認められません減額しない旨の特約は無効。ちょっと細かいですが・・「定期借家」であれば減額請求ができない旨の特約も有効となります)。10万円の家賃が高値であるとして1月に賃借人が8万円にするよう借賃減額請求をし、賃貸人がそれに応じず裁判となり、5月に賃料を9万円とする決定が出た場合、賃借人は5月からではなく、1月以降の賃料を9万円で支払えばよいことになります。1~4月は、お互いに自己が相当と認める額を請求するなり、支払っておけば債務不履行などの問題は生じません。
  合意あり 合意なく裁判確定前 合意なく裁判確定後
増額 合意した額 借主は相当と認める額を支払えばよい 確定した額(※)
減額 合意した額 貸主は相当と認める額を請求できる 確定した額(※)
(※)既に支払った額が不足する場合、借主は不足額に年1割の利息を付けて支払い、既に支払いを受けた額が超過する場合、貸主は超過額に年1割の利息を付けて返還する。


8.期限が到来すれば必ず賃貸借が終了する定期借家契約として、定期建物賃貸借、取壊し予定建物の期限付き賃貸借の2種類がある。

どちらも書面(書面の種類は問わない)で行う必要があります。1年未満の定めをした場合でも、その期間がそのまま有効となります。期間1年以上の契約をした場合、賃貸人は、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、賃借人に対して期間満了により契約が終了する旨の通知をする必要があります。通知を忘れた場合でも、その後の通知から6ヶ月後に賃貸借は終了します。

床面積200㎡未満の居住用建物の定期建物賃貸借において、やむを得ない事情で自己の本拠としての使用が困難になったときに限り、賃借人から1ヶ月の予告期間で中途解約の申入れをすることも認められています。(難問)
  成立 存続期間 終了
定期建物賃貸借 貸主が書面を交付して説明、
別書面で契約する
当事者で定めた期間 期間満了で終了
(更新なし)
取壊し予定の建物賃貸借 書面による特約 建物取壊しまで 取壊し時に終了

令和5年法改正により、定期建物賃貸借契約、取壊し予定の建物の賃貸借契約について、電磁的記録による交付が可能となりました。また定期建物賃貸借契約を行う上で事前に交付する説明書面も、相手方(建物賃借人)の承諾を得れば電子交付が可能となります。


借地権

1.借地権の存続期間は30年以上でなければならない。

通常の借地契約の存続期間は、最短でも30年です。存続期間を30年未満と約定した場合、その存続期間は30年とされます。30年以上を定めた場合は、その期間が存続期間となります。借家とは異なり期間の定めのない契約は認められず、契約期間を特に定めなかった場合は30年となります。尚、普通借地権の設定は書面による必要はありません。

2.存続期間の満了後、建物を有する借地権者が契約の更新を請求した場合、原則として前の契約と同じ条件で更新されたものとみなされる。

借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合は、契約の更新はなされません。この意義を述べるには正当事由が必要です。借地権者が契約の更新を請求しなくても、土地の使用を継続し、土地上に建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べない限り、借地契約は更新されます。この意義を述べるにも正当事由が必要です。

更新後の存続期間→ 最初の更新:最短20年 2回目以降:最短10年
更新後の期間を定めなかったときは自動的に最初の更新20年、2回目以降10年

3.借地権の存続期間満了前に借地上の建物が滅失した場合でも、借地権は消滅しない。

残存期間を超えて存続する建物を再築した場合、借地権の期間は延長されます。ただし、借地権設定者の承諾が必要です。借地権者が承諾を求めたのに2ヶ月以内に異議を述べなかったときは承諾があったものとみなされます。延長される借地権の期間は、承諾の日、または建物が築造された日の、いずれか早い日から20年となります。
当初の存続期間中に滅失 更新後に滅失
再築について借地権設定者の承諾あり…延長する
承諾日または再築日のいずれか早い日から20年間存続
再築について借地権設定者の承諾あり…延長する
承諾日または再築日のいずれか早い日から20年間存続
再築について借地権設定者の承諾なし…延長しない
(再築はできるが、借地権なし)
再築について借地権設定者の承諾なし…再築不可
(承諾に代わる裁判所の許可を受けられるケースあり)


4.借地契約が更新されない場合、借地権者は、借地権設定者に対して建物を時価で買い取るよう請求することができる(建物買取請求権)。

借地権者の債務不履行により借地権契約が解除された場合は、建物買取請求権は認められません。建物買取請求権の行使による土地明渡義務と代金支払義務は同時履行の関係に立ちます(造作買取請求権と比較)。

5.借地権の登記をしなくても、借地上の建物が登記されていれば、借地権を第三者に対抗することができる。

建物の登記は、借地権者本人名義でしなければなりません。建物が滅失した場合、建物の登記により第三者に借地権を対抗できなくなります。そこで、建物が滅失した場合は、当該建物を特定するために必要な事項など一定の掲示を借地上の見やすい場所にすることにより、建物滅失の日から2年間に限り借地権の対抗力を持続させることができます。対抗力を継続させるには、その2年が経過するまでに、建物を再築してその建物の登記をする必要があります。

借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の対抗力は当該土地全部に及びます。
宅建合格!借地権の対抗力
6.第三者に借地権を譲渡したり借地を転貸するには、借地権設定者の承諾が必要である。

借地権者の申立てにより、裁判所は借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができます借家権の譲渡・建物の転貸の場合は、裁判所の許可はありませんので区別しておいてください。

借地上の建物賃貸 → 借地権設定者の承諾不要
借地権者が借地上の自己の所有建物を譲渡 → 借地権設定者の承諾必要

借地上の建物を譲渡しようとするとき
→ 借地権者は、裁判所に対して借地権設定者の承諾に代わる許可を求めることができる

借地上の建物が譲渡されたとき
→ 譲受人は、借地権設定者に対して建物買取請求ができる

借地上の建物が競売で取得されたとき
→ 買受人は、裁判所に対して借地権設定者の承諾に代わる許可を求めることができる
→ 買受人は、借地権設定者に対して建物買取請求ができる
  借地権設定者の承諾 承諾に代わる許可 建物買取請求
借地上の建物を譲渡 必要 借地権者が申立て 譲受人が請求
借地上の建物が競売 必要 買受人が申立て 買受人が請求


7.定期借地権という、期間の更新がない特殊な借地権を3つ覚えておいてください。

長期定期借地権
期間50年以上(利用目的制限なし)、建物買取請求権なし、書面必要(種類問わない。電磁的記録でも可)。期間満了により終了し、建物を収去して更地で返還します。

建物譲渡特約付き借地権
期間30年以上(利用目的制限なし)、建物譲渡特約あり、書面不要。建物買取により終了し、建物は借家契約として継続されます。

事業用定期借地権等
期間10年以上50年未満(事業用に限る)、建物買取請求権なし、書面必要(公正証書)。期間満了により終了し、建物を収去して更地で返還します。
  存続期間 利用目的 契約方法 更新
一般定期借地権 50年以上 限定なし 書面 なし
建物譲渡特約付借地権 30年以上 限定なし 口頭でも可 地主が建物を買取る
事業用定期借地権 10年以上50年未満 事業用 公正証書 なし

令和5年法改正により、書面で行う必要があった一般定期借地契約について、電磁的記録による交付が可能となりました。元々公正証書が必要だった事業用定期借地契約は従来通り公正証書が必要となりますので注意してください。


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