連帯保証と連帯債務の難問対策

宅建試験の民法解説:「連帯保証と連帯債務」の難問対策。これらだけ丸々4肢で出題される可能性は低いですが、前回の保証債務と絡めて出題される可能性は十分にあります。すごく力を入れるべきところではありませんが、最低限、保証債務との比較だけは押さえておいてください。

連帯保証と連帯債務の難問対策

連帯保証とは

連帯保証と言いましても、保証人が数人いるわけではありません。主たる債務者と連帯して債務を保証する、という意味です。つまり、主たる債務者と同じくらいの責任を負うわけです。

よく映画やドラマで、「人のいいおじさんが、誰かの保証人になって人生台無し!家庭崩壊!」なんて場面を見かけますが、この場合の保証人とは、だいたい連帯保証人を指します。実社会において「保証」といえば、ほぼ「連帯保証」を意味します。債権者の立場からすると、抗弁権のある通常の保証人などいても無意味に等しいのです。では連帯保証とはどういったものか、見ていきましょう。


保証と連帯保証の共通点

・契約当事者は、債権者と連帯保証人である!

・連帯保証も保証の一種であり、附従性、随伴性が認められる

つまり、主たる債務者に生じた事由は、すべて連帯保証人にも効力を及ぼします。詳しくは前回の保証債務の附従性、随伴性の説明をご覧ください。また他に、連帯保証人となる資格についても、保証人の場合と同様です。


保証と連帯保証の相違点

・連帯保証は補充性を有せず、連帯保証人は催告・検索の抗弁権をもたない

これはすごく重要です。主たる債務者と連帯保証人は同列ということです。つまり、主たる債務者が期限にお金を返さない場合、債権者はただちに連帯保証人に請求することができ、さらに、主たる債務者の資力に関係なく連帯保証人の財産に強制執行することができるというわけです。

・連帯保証人間に、分別の利益は認められない!

同一の債務に対して、保証人が数人いる場合を共同保証といいます。各保証人は債務額を保証人の頭数で割った額についてのみ保証すればよく、これを分別の利益といいます。しかし、連帯保証人には、この分別の利益は認められません。連帯保証人が何人いようとも、各連帯保証人は主たる債務全額について保証の責任を負わなくてはいけません。つまり債権者は、連帯保証人が複数いる場合、誰に対しても主たる債務の全額を請求できるのです。

・債権者は、連帯保証人に重要事項を説明することを要する!

事実上債務者と全く同じ義務を負うという厳しい制度ですので、連帯保証契約締結に際し、債権者は連帯保証人に対して保証額や主たる債務者の経済状況などの重要事項を説明する義務があります。これを怠ると連帯保証契約は無効となります。
  催告の抗弁権 検索の抗弁権 分別の利益
保証 あり あり あり
連帯保証 なし なし なし


連帯保証人に生じた事由の効力

通常の保証の場合、保証人について生じた事由の効力は、弁済などの主たる債務を消滅させる行為以外は、主たる債務者に影響を及ぼしません。しかし連帯保証人は、主たる債務者と同列で債務を保証しています。そこで連帯保証人に次の事由が生じた場合には、主たる債務者にも影響を及ぼします。

・連帯保証人による債務の履行(弁済・代物弁済など。供託含む)
→ 主たる債務者の債務も消滅(通常の保証も同じ)

債権者が、連帯保証人に対して履行の請求をした
主たる債務者にも時効中断、履行遅滞の効果が発生

・連帯保証人と債権者との間での更改相殺
→ 更改:新しい債務を成立させて、前の債務を消滅させること

・連帯保証人と債権者との間の混同
→ 弁済とみなされる

以上、「履行」「更改」「相殺」「混同」という4つのキーワードを、頭の中に叩き込んでおいてください。これ以外の連帯保証人について生じた事由は、主たる債務者に効力を及ぼしません。

主たる債務者にも影響が及ぶ時効中断事由は、上記2つ目の「履行の請求」のみです。たとえば、連帯保証人が債務の承認をしても、主債務の時効には何の影響も与えません。しかし、連帯保証には附従性があります。逆に主たる債務者が債務を承認した場合には、連帯保証人にも時効の完成猶予・更新の効果が及びます。これは基本ですが、とても重要です。ひっかけ問題に注意してください!


連帯債務とは

連帯債務とは、債務の目的が性質上可分であり、法令の規定または当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担することをいいます。同一の債務について数人の債務者が「各自独立に全部の給付をなすべき債務を負担」する債務関係となり、連帯保証が債務者と保証人が連帯して債務を負担するのに対し、連帯債務は複数の債務者が連帯して債務を負担します。

AとBとCがお金を出しあって、Dから300万円の自動車を買うとします。この場合ABCはそれぞれ100万円の債務を負い、Dはそれぞれに100万円の支払いを請求するのが普通でしょう。しかし、それはDにとってみたらものすごく面倒くさいことですよね。

そこで、連帯債務という制度が生まれました。Dは、ABCの誰か一人に「債務の全部の履行」を請求できるのです。Dは、ABCの一人に対し、または全員に対して同時もしくは順次に全額の弁済を請求することができます。自由自在です。

そして、代金を支払った連帯債務者の一人は、他の連帯債務者に対して立て替えた代金の求償をすることができます。また、ABCそれぞれが100万円ずつの債務を負担する必要もありません。A200万円、B60万円、C40万円など、各人がいくら負担するかはABCの話し合いで自由に決めることができます。そしてこの定められた額を「負担部分」といいます。では、この求償権と負担部分が、どう連帯債務に影響してくるのか例を挙げます。負担部分は、A200万円、B60万円、C40万円です。

1.DがAに対してその債務全額を免除した場合
A:全ての債務を免れる
BC:全額について連帯債務を負うが、Aに対して求償権をもつ

2.Aの債務について消滅時効が完成した場合
A:全ての債務を免れる(時効の援用必要)
BC:全額について連帯債務を負うが、Aに対して求償権をもつ

3.AがDに対して300万円の反対債権を有しており、相殺適状にある場合
Aが相殺をした場合:債務は消滅し、AのBCに対する求償の問題となる
Aが相殺をしない場合:BCは、Aの負担部分200万円について相殺を援用でき、100万円について連帯債務を負うまで履行の拒絶が認められる

また、この場合のAの負担部分は200万円ですが、Aが10万円でも20万円でも債務を消滅させ、共同の免責を得た以上は、その額がいくら少額でも他に求償できるということにも注意してください。自己の負担部分を超えない弁済でも求償可能で、「免責を得た額」が求償権の対象となります


連帯債務者に生じた事由の効力

連帯債務の各債務者が負う債務は本来別個独立の債務であり、連帯債務者の1人に生じた事由は、他の連帯債務者の債務に影響を与えないのが原則です。しかし、例外的に連帯債務者の1人について生じた事由が、他の債務者の債務に影響を与える場合として次の4つがあります。

連帯保証人に生じた事由で主たる債務者にも効力が及ぶものとして「履行」「履行の請求」「更改」「相殺」「混同」の5つがあると上でお話しましたが、これに「時効」と「免除」を加えてください(改正民法により、時効と免除は相対的効力となりました。当事者の意思表示で絶対的効力とすることもできる。また、連帯債務者の一人にした履行の請求も、他の連帯債務者に対して効力を生じなくなりましたので注意)。「履行」「更改」「相殺」「混同」の4つのキーワードを覚えておいてください。他の連帯債務者の反対債権での相殺は負担部分についてのみ絶対的効力を生ずるという点にも注意です。

また、改正民法により時効と免除が相対的効力となりましたが、他の連帯債務者は、時効が完成した者または免除を受けた者にも求償権を有するという点に注意してください。債権者A、連帯債務者BCDといて、AがBの債務を免除したとします。免除は相対効となったので、Bの債務が免除されても、AはCDに全額の請求ができます。当初より多くの損害を被ることとなるCDは、免除を受けたBにも求償はできるというわけです。

以上、主たる債務者や他の債務者に影響を与える事由をまとめておきますと、

保証債務:履行、相殺
連帯保証:履行、履行の請求、更改、相殺、混同
連帯債務:履行、履行の請求、更改、相殺、混同、時効免除

となります。長々とお話してきましたが、最低限この3行と、連帯保証には2つの抗弁権が認められないということを覚えておいてください。宅建試験での頻出ポイントは、ほぼここだけです!


分かりやすい民法解説一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< >>> 次のページ >>>
保証債務の難問対策 契約不適合責任の難問対策