世間一般の「保証」とは連帯保証

宅建試験の民法解説:前ページの保証債務よりも保証人の責任が重くなる「連帯保証」をお送りします。連帯保証と言いましても、保証人が数人いるわけではありません。主たる債務者と連帯して債務を保証する、という意味です。つまり、主たる債務者と同じくらいの責任を負うということです。より詳しい解説はこちら→連帯保証の難問対策

連帯保証の宅建解説

よくドラマなどで、「人のいいおじさんが、誰かの保証人になって人生台無し!家庭崩壊!」なんて場面を見かけますが、この場合の保証人とは、だいたい連帯保証人のことです。と言いますか、実社会において「保証」といえば、ほぼ「連帯保証」を意味します。債権者の立場からすると、通常の保証人などいても無意味に等しいのです。では、連帯保証とはどういったものか見ていきましょう。


保証と連帯保証の共通点

・契約当事者は、債権者と連帯保証人である!

・連帯保証も保証の一種であり、附従性、随伴性が認められる

つまり、主たる債務者に生じた事由は、すべて連帯保証人にも効力を及ぼします。詳しくは前回の保証債務の附従性、随伴性の説明をご覧ください。また他に、連帯保証人となる資格についても、保証人の場合と同様です。


保証と連帯保証の相違点

・連帯保証は補充性を有せず、連帯保証人は催告・検索の抗弁権をもたない

これはすごく重要です。主たる債務者と連帯保証人は同列ということです。つまり、主たる債務者が期限にお金を返さない場合、債権者はただちに連帯保証人に請求することができ、さらに、主たる債務者の資力に関係なく連帯保証人の財産に強制執行することができるというわけです。

・連帯保証人間に、分別の利益は認められない!

同一の債務に対して、保証人が数人いる場合を共同保証といいます。各保証人は債務額を保証人の頭数で割った額についてのみ保証すればよく、これを分別の利益といいます。しかし、連帯保証人には、この分別の利益は認められません。連帯保証人が何人いようとも、各連帯保証人は主たる債務全額について保証の責任を負わなくてはいけません。つまり債権者は、連帯保証人が複数いる場合、誰に対しても主たる債務の全額を請求できるのです。


連帯保証人に生じた事由の効力

通常の保証の場合、保証人について生じた事由の効力は、弁済などの主たる債務を消滅させる行為以外は、主たる債務者に影響を及ぼしません。しかし連帯保証人は、主たる債務者と同列で債務を保証しています。そこで連帯保証人に次の事由が生じた場合には、主たる債務者にも影響を及ぼします。

・連帯保証人による債務の履行(弁済・代物弁済など)
→主たる債務者の債務も消滅(通常の保証も同じ)

債権者が、連帯保証人に対して履行の請求をした
主たる債務者にも時効中断、履行遅滞の効果が発生

・連帯保証人と債権者との間での更改相殺
→更改:新しい債務を成立させて、前の債務を消滅させること

・連帯保証人と債権者との間の混同
→弁済とみなされる

以上、「履行」「更改」「相殺」「混同」という4つのキーワードを、頭の中に叩き込んでおいてください。これ以外の連帯保証人について生じた事由は、主たる債務者に効力を及ぼしません


最後に、知って得するとても重要な注意点です。連帯保証人が債務の承認をしても、主債務の時効には何の影響も与えません。しかし!連帯保証には附従性があります。逆に主たる債務者が債務を承認した場合には、連帯保証人にも時効の完成猶予や更新の効果が及ぶのですね。これは基本ですが、とても重要です。ひっかけ問題に注意してください!


連帯保証は怖いですね。本当に信用できる人からのお願いでないと、連帯保証人の判を押してはいけません。「金の切れ目は縁の切れ目」と言いますので、親しい人でも金銭のやり取りは慎重に!


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保証債務 連帯債務
【宅建試験問題 昭和55年ー問9】Aは、BのCに対する債務について連帯保証人となった。次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.Aが、連帯保証人となった後破産したとき、AがCの指名した者であったときでも、CはBに対し、新しい保証人を立てることを請求することができる。
2.CがAに債務の履行を請求してきた際、AはCに対し、まずBに債務の履行を催告することを請求することができる。
3.BがCに対して債権を有していても、Aはその債権により、相殺をもってCに対抗することができない。
4.Cが、Aの連帯保証債務を免除したときでも、Bは、その債務を免れない。
1 誤:保証人が破産手続開始の決定を受けた場合、債権者は、「行為能力者で、かつ、弁済の資力を有する者」を新たに保証人に立てるよう主たる債務者に請求することができるが、債権者が指名した保証人である場合はこの限りではない
2 誤:連帯保証人は、催告の抗弁権を有しない
3 誤:主たる債務者が債権者に対して反対債権を有している場合、連帯保証人は相殺を援用することができる
4 正:連帯保証人が債務の免除を受けても、主たる債務には影響しない(連帯債務者の一人が債務を免除された場合、その連帯債務者の負担部分について他の連帯債務者も債務を免れる点と比較 改正民法により、免除は相対効となりました)
【宅建試験問題 平成10年ー問4】AがBに 1000万円を貸し付け、Cが連帯保証人となった場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.Aは、自己の選択により、B及びCに対して、各別に又は同時に、 1000万円の請求をすることができる。
2.Cは、Aからの請求に対して、自分は保証人だから、まず主たる債務者であるBに対して請求するよう主張することができる。
3.AがCに対して請求の訴えを提起することにより、Bに対する関係で消滅時効の中断の効力が生ずることはない。
4.CがAに対して全額弁済した場合に、Bに対してAが有する抵当権を代位行使するためには、Cは、Aの承諾を得る必要がある。
1 正:債権者は、BにもCにも、または2人同時にも債権全額の請求ができる
2 誤:連帯保証人は、催告の抗弁権を有しない
3 誤:連帯保証人に対する履行の請求により、主債務の消滅時効は中断する 改正民法により、履行の請求は相対効となりました
4 誤:債務の全額を弁済した連帯保証人は、当然に債権者の有する抵当権を行使できる