時効(難問対策版) 重要度 ★★★☆☆


今回は『時効』についてお話いたします。

時効とは、「時」間の経過により、法律関係の「効」力が変化し、これまで持っていなかった権利を取得すること、または、これまで存在した権利が消滅することをいいます。長期間継続した事実状態を尊重することによって法律関係の安定を図ります。

これまで持っていなかった権利を時間の経過により取得することを「取得時効」、
これまで存在した権利が時間の経過により消滅することを「消滅時効」といいます。

基本は簡単ですが、掘り下げると一気に難しくなります。
前回の相殺と同様、優先度低めで押さえておきましょう。

では、順番に見ていきます!


取得時効

所有の意思をもって平穏かつ公然に占有する
・占有者が占有のはじめ善意無過失のときは10そうでないときは20占有する

「所有の意思」=借主や預り主としての占有を含まない。
「平穏かつ公然」=荒っぽくなく、堂々と。
10年」=他人の物であることを知らず、そのことについて落ち度がない。
20年」=他人の物であることを知っていても、落ち度があって知らなくてもよい。

占有者に変更があった場合の善意無過失は最初の占有者の占有開始時点で判定します。
善意無過失のAが占有開始 → 7年 → 悪意のBが占有承継 → 5年
Bは12年の時効期間を主張して時効の完成を援用することができます(A保護のため)。
Aが悪意でBが善意無過失だった場合、Bはまだ時効完成を主張することができません。

・取得時効の対象となる権利は、所有権・地上権・永小作権・地役権・賃借権など(地役権は、「継続かつ表現のもの」に限り時効取得できる)。時効取得ができないものとして、占有権、抵当権、留置権、先取特権を覚えておいてください。

・一筆の土地の一部についても時効取得ができる



消滅時効

時間の経過により権利が消滅することを消滅時効といいますが、では、その時間の経過とはどこからを指すのでしょうか。消滅時効が試験に出るとしたら、この「消滅時効の起算点」です。

確定期限ある債権(○月○日に〜する)=期限到来時から
不確定期限ある債権(父が死亡したら〜する)=期限到来時から
期限の定めなき債権=債権が成立したときから
停止条件付債権(○○したら〜する)=条件成就のときから
解除条件付債権(○○しなかったら〜する)=債権成立のときから(条件成就未定の間で
                            時効は進行する)

債務不履行による損害賠償債権=本来の債権の履行を請求できるときから
不法行為債権=被害者または法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年
          (また
は不法行為時から20年)

・債権の消滅時効の期間は10
・債権以外の財産権(地上権、永小作権、地役権、抵当権)の消滅時効の期間は20
・確定判決によって確定した債権の消滅時効期間は、10年より短く定められていても10であり、確定した時から改めて10年の時効が進行する
所有権は(所有権に基づく物上請求権や登記請求権も)消滅時効にかからない
・占有権、留置権、先取特権は独自に消滅時効にかからない
・同時履行の抗弁権が付着している債権も、履行期到来から消滅時効が進行する



時効の中断

時効の成立に必要な期間の進行を中断させ、それまでの期間の経過を「ゼロ」にすることを「時効の中断」といいます。それまで進行した時効期間は、いっさい効力を失います。試合が中断されるなど一般的な意味とは異なり、時効の進行を中断させ「終了」させますので注意してください。

一般的な中断の意味にあたるものとして「時効の停止」があり、時効の進行を一時的に停止させるのですが、こちらの出題可能性は低いでしょう。ちなみに時効の停止とは、天災等で時効を中断することができないときに、その障害消滅時から2週間を経過するまで時効は完成しないとする時効完成を猶予するための制度です。他にも相続など時効の停止が適用されるケースはあるのですが、「天災」「2週間」だけ頭の片隅に入れておきましょう。

時効の中断事由として以下のものを覚えておいてください。

1.請求(裁判上のもの=訴えの提起、裁判外のもの=催告)
債権の給付を求める訴え、支払命令、和解のための呼び出し、破産手続参加など。訴えが却下されたり、取り下げられた場合には中断とならない。催告とは、6ヶ月以内に裁判上の請求等をすることによって、催告のときに遡って時効を中断させるための前提手段。

2.差押え・仮差押え・仮処分

3.承認
時効によって利益を受ける者が、時効によって権利を失う者に対して、その権利が存在することを知っている旨を表示すること。黙示でも構わない。一部弁済や利息の支払い、証文を書く、もう少し待ってほしいと口頭で申し入れる、など。承認には管理能力が必要で、同意なく未成年者・成年被後見人のした承認は取り消すことができる(被保佐人・被補助人のした承認は有効)。

プラス、取得時効に特有の中断事由として、「占有の喪失」があります。任意に占有を中止した場合はもちろん、他人に占有を奪われた場合でも取得時効は中断します。

時効が完成していたことを知らずに債務の承認等をしてしまった場合、時効を援用することはできなくなります。債務の存在を認めておきながら、時効が完成していたならやっぱり払わな〜いなどというのは虫がよすぎます。



時効の放棄・援用

時効を主張することは義務ではなく、本人の自由に任されます。時効を主張しないことを「時効の利益の放棄」といい、時効を主張することを「時効の援用」といいます。

以下、出題ポイントです。

時効の完成前に、時効の利益を放棄することはできない!これを認めると、悪徳金融業者の暴利行為が始まります。逆に、時効完成後は時効利益の放棄も認められるということです。

・時効の援用は本人だけでなく、保証人・連帯保証人、物上保証人、抵当不動産の第三取得者、詐害行為の受益者もすることができる!後順位の抵当権者は援用できないという点に注意です。また、少し深追いしますと、A所有の土地に建つ家屋をCが賃借し、その土地についてBの取得時効が完成した場合、Bが時効の援用をしてくれない限りCは不法占拠者となってしまいますが、この場合のCは時効を援用することができません。Cは土地そのものについて利益を有しているわけではありません。家屋賃借人は、土地についての時効の援用権者に該当しないということを頭の片隅に入れておいてください。

・裁判所は、当事者が援用しないのに時効を前提として裁判をしてはならない!

・時効が完成すると、時効の効果は、その起算日に遡って効力を発する


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